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真実の目  作者: Granderx
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「私たちがずっと夢見てきた日」

アリズは全裸で、服を一切着ておらず、温泉の湯気だけが彼女の最も秘められた部分を隠していた。


でも、それは僕にとって何の意味もなかった。もう何度もアリズの裸を見たことがあったからだ。


それでも、今日はちゃんと話をしに来た。そして、正直に言えば、たとえ彼女が裸でも、アリズが俺を追い払うことはないと分かっていた。


…だが、それでもやはり、少しばかり気まずさはあった。


「アリズ、話がある。最近、いろいろあったからな。」


俺の声を聞いたアリズは、敵ではなく俺だと気づき、安心したようだった。


「ふふっ、ケンジ、恥ずかしくないの? 見ての通り、私は全裸よ?

それに、あなたも他の男と同じで、襲いかかってこないって誰が保証してくれるのかしら?」


その言葉の調子から、彼女が冗談を言っているのは明らかだった。俺もそれをちゃんと理解していた。


「わかってるさ。君は誇り高い貴族の血を引く女性だからな。

でも、俺の前では、もう何度もこういう状況があっただろう?今さら恥ずかしがるようなことでもないと思うが。」


「まあ、それはそうね。けど私は人間だもの、やっぱり少しくらいは恥ずかしいわよ。

…でも、相手がケンジなら別にいいかな。

確かに似たような状況は何度かあったけど、温泉では初めてだし。

まさか、何か新しいプレイでも試したかったとか?ほんと、ケンジって変態ね。」


彼女の声には笑いが混じっていた。どうやら、この状況を楽しんでいるようだった。


それに対して俺は――もう顔が真っ赤になっていた。


やはり、アリズは外見も性格も魅力的で、俺は彼女に強く惹かれていた。


だけど、告白する勇気はなかったし、きっとこれからもできないだろう。…まあ、それは今はいい。


「アリズ、お利口さんになってくれよ。変態呼ばわりするなら、あの時の君のことを思い出させてもいいんだぜ…」


「待って!やめて!あれは…若気の至りってやつよ!

今の私は、ちゃんと自分をコントロールできるの!それに…」


そう言いながら、アリズは湯から出て俺に近づき、耳元でささやいた。


「今の私は、昔の未熟な女の子とは違うわよ。

今の私は、男に…ケンジにも、たっぷり快楽を与えてあげられるんだから。…言ってくれれば、ね。」


…正直、そんなこと言われたら、俺だって興奮してしまうさ。


でも、それを態度に出すわけにはいかない。


なにせ、アリズの性格からして、本当にベッドに連れていかれそうだったからな。


「…遠慮しとくよ。」


「ふふ、でも本当は興奮してるんでしょ?当たりでしょ?」


俺の頭の中には、こんなツッコミが浮かんでいた。


「お前、まさか心を読む力でもあるのか!?このまま『じゃあベッド行こう』なんて言われたら、気絶するかもしれん…」


俺は急に背を向けて、普段通りの真面目な声を出した。けど、顔は真っ赤だった。温泉のせいじゃない。


「アリズ、いい加減にしろ。服を着てくれ。

それで、さっき言ってた家に行こう。少しゆっくり話がしたい。」


「うん、いいよ。行こうか♪」


アリズはさっと服を着て、俺と一緒に小屋へと向かった。


先に俺が入り、彼女はその後ろからついてきた。


そして、彼女はドアを鍵で閉め、その鍵を内側の扉のくぼみに差し込んだ。


二人でソファに腰を下ろし、ゆったりとした姿勢で座った。


静かな空間に、俺の声が優しく響いた。


「アリズ、あの事件の後、君は大丈夫か?

…前から護衛の存在が煩わしいって言ってたよな。

それが今や、四六時中付きまとってるんだから、イライラしてるんじゃないかと思って。」


アリズは大きく息を吸ってから、深く吐き出した。


「そうよ、あいつら、どこに行ってもついてくるんだから。

あの時――あの地獄のような夜――どうして彼らはいなかったの?

どうして、私たちだけが、あんな目に遭わなきゃならなかったの…」


「落ち着け、アリズ。もう終わったことだ。

過去は変えられない。

大切なのは、今もこうして皆が生きてることだ。

…たとえ、心に傷を負っていたとしても。」


「その通りね…。

今の護衛なんて、結局役に立たなかったわ。

だって、あの時――私を救ったのは、護衛じゃなくて……あなたよ。」


「…でも、忘れたのか?

君自身が、護衛に一時退避を命じたんだ。」


「……そうだけど、それでも分かってるでしょ?

あの時の相手のスピード、護衛の誰にも対応できなかった。

彼らは王国でも最強クラスの戦士よ?それでも無理だった。

だけど、ケンジ、あなたは…それを止めた。」


「…確かに。そう考えると、君の言う通りかもしれないな。」


「ねえ、ケンジ…あの男の目…見たでしょ?

あれって……あなたの目と、同じだったよね?」


「…ああ、そうだ。

あのとき彼は、怒りと復讐心に突き動かされて、俺たちと同じ“目”を一時的に発現させた。

だからこそ、護衛でも止められなかったんだ。」


「じゃあ、やっぱり……私の見間違いじゃなかったんだね。」


「アリズ、“目”はその人の中で最も強く育った感情によって形を取る。

俺のは“怒り”、君のは“誇り”。

そして、“善”の感情でも発現する例がある。“誠実”とか“寛大”とか。

さらに、同じ感情でも、その強さや資質によって“色”や“能力”が変わる。

たとえば、“誇り”が未完成な者は君のような深い紺色ではなく、

明るい水色になったりする。能力も似ているが、違いも出る。

そして、“目”は基本的に極限の状況でしか発動しない。

だが、俺たちは……長時間、維持できる。」


「でも……私たちでも、限界を超えない限り、永続使用はできないんだよね。

目のシステムは、精神にも大きな負荷がかかるから。」


「うん。彼も、きっと無意識で発動させたんだ。

私が少し騙したせいで、強い憎しみが生まれたんだろう。

あの“ゲーム”が……命を賭ける結果になるなんて。

…もっと、慎重にならなきゃ。」


アリズは、ふと黙り込んだ。


「…アリズ。」


俺が名前を呼ぶと、彼女はゆっくりと、優しい目で俺を見つめ返した。


「……あ?」


その一言に、妙な間があった。けれど、そのまま俺たちはしばらく静かに語り合い、やがて夜も更けていった。小屋の寝室には、柔らかな灯りと、二人きりの空間があった。俺たちは、同じベッドに横になった。……もちろん、ただ眠るために、だ。だが、アリズはそんな状況を見逃さない。


「ふふっ……ケンジ、やっぱり変態ね。

まさか、私が寝てる間に襲おうなんて考えてないでしょうね?」


その口調は軽やかで、明らかに冗談めいていた。


「そんなこと……するわけないだろ。」


「え~?本当?私が“お願い”するまでは、何もしないつもり?」


「当然だ。


……でも、内心では心臓がやかましく脈打っていた。アリズはそんな俺の動揺を楽しんでいるようだった。


「ふふっ……その真面目な顔、ずるいわね。

でも……安心して、ケンジ。今日はちゃんと、何も起きない夜にしてあげるから。」


それでも、彼女の最後の一言には、どこか“また今度”という含みがあった。


俺は布団の中で静かに息をつきながら、

目を閉じ、深い眠りへと落ちていった。


翌朝――:


俺とアリズは、しばらく別れずに一緒にいることにした。


「ふふっ……護衛たちには“学院長のところに行く”って言っといたわ。」


アリズはしたり顔でそう言って、小さくウィンクした。


「……そんな嘘ついて大丈夫かよ。」


「大丈夫よ、バカ正直に全部話すより、こういう方が楽しいでしょ?」


本当の目的は――


今日は年に一度の「三の統治の日」。


それは、世界中で祝われる宗教的な祝祭日で、

国によって日にちは違うが、

人々が集い、祈り、笑顔を分かち合う特別な日だ。


都市の広場に着いた時には、すでに祭りは始まっていた。


露店が立ち並び、

子供のおもちゃから生活雑貨、美味しそうな食べ物まで、

何でも揃っていた。


「わぁ……ケンジ、見て!あれ美味しそう!」


アリズは目を輝かせて、次から次へと屋台を見て回る。


いつもの高貴な雰囲気はすっかり消え、

まるで普通の女の子のようにはしゃいでいた。


……そんな彼女を見ていると、

心のどこかが、ほんのり温かくなる。

「そして新しい章です。これから2週間の間、1日に2章ずつ更新します。その後は、週に3回、月曜日・水曜日・金曜日に更新する予定です。」

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