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インディペンデンス・レッド ~5000マイルの絆~  作者: 幸運な黒猫
第一章:身をもって知るは世界の現実(日本~中東)

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第3話・太っ腹!

 せっかく女史から逃げたのに、結局ラウンジでは休む事が出来ないでいた。今度は先輩のコンチクチョーが何度もメッセージを入れてきて、対応せざるを得なかったからだ。終わらせたプロジェクトの資料を預けておいた社員が無断欠勤して連絡が付かず、現場はパニック状態になっているとか。

 だから何だというのだ。『直接そいつの家に行ってくれよ』としか思わない。疲れて死んだように寝ているかもしれないし、もしかしたら仕事に嫌気が差して病んでいるのかもしれない。

 いずれにしてもオレはドバイに行くので忙しいんだ、出勤している連中で対応してくれ、と。


 そんなこんなで貴重な時間を浪費してしまい、結局機内で寝るしかなくなってしまったのだけれども、それはそれで結果的に良かったと思えた。


「マジかこれ。超快適じゃないか」


 何故ならば、自宅のベッドより何倍も寝心地の良いファーストクラスのシートがそこにあったからだ。『流石上場企業、太っ腹!』って一瞬思ったけど、続けて『そもそも普段がブラックな時点で流石も何もないだろう』と気が付いた(さか)しい自分がちょっとだけ悲しい。それでも食事もドリンクも最高に美味いし、何かもう、サービスが至れり尽くせりで尻に根が張ってしまった。一生ここに監禁されてもいい位だ。


 ドバイ国際空港から会場であるエキスポシティ・ドバイまでは、車で40分程の距離。ここは以前、“ドバイ国際博覧会”で使用された跡地で、遺産(レガシー)として再利用されている広大な施設だ。ただ、直接向かう訳ではなく、HuVer-WK(ホーバーク)の受け取りの為に一旦港に寄る必要がある。正直面倒くさい話だけど、その為に来たのだから仕方がない。

 会社が手配した現地スタッフと合流して、名前も解らない高級車で港に向かった。その間、アラビア語会話の本を片手にコミュニケーションを試みるが撃沈。車なんて安いのでいいから、通訳くらいつけて欲しかった。

 

 オレは港に着くとすぐに会社のマークが入ったHV専用コンテナを探し、中に固定されているHuVer-WK(ホーバーク)のコクピットに乗り込んだ。言葉が通じないスタッフといるのが辛かったからだ。

 しかし、想定外と言えば良いのだろうか、新品のマシンに搭乗して妙にテンションが上がっている自分に気付いてしまった。シートにはビニールが掛かっていたり、モニターにはフィルムが貼ってあったりと、とにかくすべてが新しいパーツだ。微かに感じる機械の匂いが心地よい。アクセルやブレーキに貼ってある養生シートを剥がし、足をかけてシート位置を調整。そして、オペレーターの登録をして起動準備完了だ。あとは固定ワイヤーを外すだけだが、それはHV専用トレーラーが来てからで良いだろう。

 HV専用コンテナの床には長距離輸送用の固定フックが設置されていて、HuVer-WK(ホーバーク)は前後左右2本ずつ、合計8本のワイヤーでガッチリと固定されている。車と違って高さがある分横揺れに弱く、海上輸送が主なHuVer(フーバー)の場合はかなり頑丈に固定しておく必要があるからだ。


 ……それにしてもトレーラーの到着が遅い。渋滞に巻き込まれたって連絡が入ったけど、ドバイみたいな広い道路でも渋滞なんてあるものなのか。


「تناول بعض الماء من فضلك」


 その時、現地スタッフの一人がタラップを登り声をかけてきた。何を言われたのか解らずにキョトンとしていると『ど~おう……ぞ? のみます、ヨ』と、たどたどしい日本語でペットボトル入りの水を差しだしてきた。気を使ってくれたのだろう、手に持っていたのは日本メーカーの天然水だった。


「あ、ありが……じゃなくて、えっと……シュクランクティール((どうもありがとう))


 アラビア語ってのはとんでもなく難解で、とてもじゃないが勉強しようという気すら起こらない。だからという訳じゃないけど、最低限の礼儀として挨拶とイエス・ノー、お礼の言葉だけはちゃんと覚えて来た。発音は微妙だけど、何とか感謝の気持ちは伝わってくれたらしい。彼はニコっと笑顔を見せ、他の暇そうにしているスタッフ達の元へ戻っていった。





「……っと、やべえ、寝てたか」


 あまりにHV専用トレーラーの到着が遅くて、いつの間にかコクピットで寝てしまっていたみたいだ。中途半端に寝たせいなのか、頭の中がフラフラと揺れている様な感じがして少し気持ち悪い。

 辺りが暗くて陽が沈んだのかと焦ったんだけど、よくよく目を凝らして見ると壁に囲まれているのが解った。コクピットで寝てしまったオレに気を使って、そのままにしておいてくれたのか。日本の天然水の件といい、中東の人って気が利くんだな。

 取り敢えず明かりが欲しいと思い、オレはシートの下に常備しているハンディライトを取ろうとしたのだが……その時初めて()()()()()()()()()に気が付いた。


「え……何で縛られてるの、オレ」

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