表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インディペンデンス・レッド ~5000マイルの絆~  作者: 幸運な黒猫
第二章:信条・愛情・陰謀論(日本)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/82

第15話・やるんだよ

「——警察!?」


 織田女史が驚き(ささや)くと同時に、美郷さんはスリッパを脱ぎ捨ててそっと廊下に出て行った。部長は壁に設置してあるインターホンの子機に近づくと、俺達に目配せをしてから通話ボタンを押した。子機のスピーカーから声が聞こえてくる。


〔夜分失礼します。少々お聞きしたい事がありまして、お伺いしました〕

「あの、どういったご用件でしょう?」

〔インターホン越しではちょっと。お時間は取らせませんのでお願いします〕


 ここで時計を見る望月部長。考えているフリをする時間を計っているようだ。


「とりあえず、もう一度警察手帳見せてもらえます? 最近は偽装犯罪もあるみたいなので」

〔ああ、すみません〕

「あなた、こんな時間に誰ですか。非常識ね!」


 と、わざとインターホンに声が入る様に話しながら、美郷さんが部屋に戻って来た。その手には、俺と織田女史の靴がある。足音がしない様にわざわざスリッパを脱いで、素早く取りに行ってくれていた美郷さん。彼女は靴を部長に渡し、入れ変わる様にインターホンの会話に参加した。


〔すみません、夜遅くに。えと、手帳見えます?〕

「はあ、なんとか。でもそれ、本物なの?」

〔もちろんですよ〕


 疑り深い人を演じ『警察に電話確認してかまいませんよね?』と、取り留めのない内容で美郷さんが時間稼ぎをしてくれている。

 その間に部長はジェラルミンケースを閉じながら、俺と織田女史に伝えなきゃならない事を端的に話し始めた。


「いいか、これを使って零士と連絡を取れ」

「部長達はどうするのですか?」


 この状況でも元同僚夫婦を気遣う織田女史。葵ちゃんの事も気がかりなのだろう。しかし部長は『大丈夫だ、気にするな』とだけ返事をして、俺の肩に手を乗せ諭すように続けた。


「そして藤堂、お前が零士にHuVer(フーバー)の動かし方を教え込むんだ。あいつは操縦に関しては素人同然。生き残るにはその方法しかない」

「出来るでしょうか?」

「——やるんだよ、出来なくてもだ!」


 軍事用HuVer(フーバー)との戦い方、戦争を生き抜くための操縦なんて、俺だって解らないってのが本音だ。


「だがな、気負い過ぎてもだめだ。お前はガタイのわりに真面目過ぎるところがあるからな。半分くらい適当でもいい」

「はあ……」

「気楽にやれよ。Take it easyってやつだ」

 

 いつもながらの部長の発破を浴びながら、俺と織田女史は勝手口からコッソリと外に出た。『この時間ならまだ終電はあるはずだ』という部長の言葉を信じて、真っ直ぐに駅を目指す。


「あの警官はどう考えても、俺達と無関係じゃないですよね」

「そうね、タイミングが良すぎるわ」


 こちらにとっては最悪のタイミングだけど。ちなみに、織田女史の考察では『あの警官は普通に通報を受けて来訪しただけだと思う』だそうだ。もし計画的に動かしたのなら、簡単に裏口から逃げられるはずはないのだから。


 ――あれは“警告”と受け取るべきなのだろう。


 しかし、これではっきりしたことが一つある。俺をテロリストに仕立て上げようとし、零士・ベルンハルトを拉致したテロリストのスパイは社内にいるという事だ。それも本社もしくは富士吉田支社の社員に絞られる。


 ギリギリ電車の到着時間に間に合い、俺と織田女史は文字通り飛び乗った。ローカル線特有のBOX席に座り、急いでロールカーテンを降ろす。ひと呼吸待ってスキマから外を確認したが……どうやら追いかけてくる者はいない様だ。

 これでやっと一息入れる事が出来る。改札口近くの自販機で買った缶コーヒーを開けて、ゆっくりと香りを吸い込んだ時、織田女史が真剣な眼差しで話しかけて来た。


「藤堂さん……」

「なんでしょう?」 

「今この場で辞表書いて下さい」


 ……はい? 何を言い出すんだこの人は!?


「いつトリスの通信が繋がるか解らないのですから、部屋に引きこもって下さい」

「流石にそれは……」


 いや、彼女の目は真剣だ。それゆえ無下(むげ)に断れないし、かといって無職になるのもちょっとな。『恋は盲目』とは言うが、ここまで回りが見えなくなるものなのか? 零士・ベルンハルトに向けられた気持ちの0.1%でいいから、俺の生活の事を考えてくれ。

 ……そもそも、角橋重工ほどの大手でHVオペレーターをやっていますなんて、恐ろしく高い社会ステータスなんだぞ。


「テロリスト報道にストレスを感じたと言えば、誰もが納得するでしょう」

「ちょっと待って下さいって」

「食事や生活の面倒は私が看ますのでご心配には及びません」


 ……めちゃくちゃ心配です。

ご覧いただきありがとうございます。


本作が気に入って頂けましたら、この”あとがき”の下にある☆☆☆☆☆をポチっと押していただけるとありがたいです(下にずんどこスクロールお願いします!)

ブックマークも是非是非よろしくお願いします。


今後とも続けてご覧いただけると幸いです! 


©2025 猫鰯 All Rights Reserved. 無断転載・引用禁止。

著作権は作者に帰属しています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ