『安物速記シャープと砥石』
鍛冶屋の仕事場に、刃物を研ぐための砥石がありました。たまたまそこを安物速記シャープとプレスマンが通りかかり、安物速記シャープは、プレスマンに、砥石に速記を書くようけしかけました。もちろん、これは意地悪です。きっと砥石に速記を書くことなんかできないだろうと思ったのです。
ところが、プレスマンは、たやすくそれを成し遂げました。なぜって、プレスマンにはばねが入っていて、硬いものに速記を書くときには、自動的に芯を縮めて、書かれる相手に合わせられるようになっているのです。
安物速記シャープは悔しい思いをしました。意地悪をしたつもりが、かえって鼻高々にしてしまったのです。もちろん、プレスマンは、そんな態度を見せませんでしたが、安物速記シャープには、プレスマンのそういう涼しい感じすら、鼻についたのです。
安物速記シャープも、砥石に挑みました。
で、敗北しました。砥石に先端を削られた安物速記シャープは、もう、速記が書けなくなってしまったのでした。
教訓:こういう経験をばねにすることができない者は、成長できない。