プロローグ
読んでいただきありがとうございます。
私が高校生くらいの時に描いていた作品です。
完結している作品なのでサクサクと更新していきますが、改めて読み返すと拙い文章です。
お見苦しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
血の雨を降らせる男がいる。
いつでも傘を持ち、他人からはこう呼ばれる。
「傘男ぉ?」
一人の高校生が言う。
ここはとある駅のホーム。不良高校生のたまり場となっている。
「そう!いつでも傘を持ってるんだけど、その傘で絡まれたら叩いたりして攻撃するんだってさ!とてつもなく強いらしいぜ!」
もう一人の高校生が答えた。
「へぇー。だったらその傘を奪っちまえば勝てんじゃね?」
「それがどうもそういうわけにはいかないらしいんだ。とにかくそいつは血を好み、そいつに関わったら死だ。」
「あれ?ガギガーまた傘持ってきたのかよぉ。」
「おぅ、ルドル!今日は雨って予報だ!オレの中で。」
ガギガーと呼ばれた男がにっこり笑って答える。
「ははっそうか。んじゃまた明日なー。」
そう言ってルドルは帰る。
「ガギガー!ガギガー!あんた周りから何て呼ばれてるか知ってるぅ?」
ガギガーに話しかけてきたのは、なんとガギガーの傘だ。
「傘男だろ?ルン。」
ガギガーは、喋る傘をルンと呼んだ。
「私を毎日持ち歩いてるからだってさぁ!」
ケタケタとルンが笑う。ガギガーをバカにしているようだ。
ガギガーが何か言おうとする前に、後ろから別の声がした。
「傘男!オレと勝負しろ!」
高校生が、ガギガーの後ろに立っていた。
くるりとガギガーは高校生の方を向く。
「へぇー。よくオレが傘男ってわかったねー。」
ガギガーが感心して聞く。
「晴れの日に傘を持ってるバカはお前だけだ!」
「ギャハハハハー!バカだってさ!ガギガー!あんたバカだってさぁ!」
ルンが大笑いする。
「まぁ知ってて戦いを挑むなんて命知らずとしか言いようがないけどね。君、死ぬよ?」
ルンを無視してガギガーは言う。
「お前をたおせばオレの名が上がる。ぜったいに勝つ!」
高校生がパンチをしてくる。
「意気込みはいいんだけどねー。」
やれやれという感じでガギガーは戦いに応じる。
パンチを傘で叩いてはじく。
「何やってんのよガギガー!はやく血を!私に血を吸わせて!」
ルンが叫ぶ。
ガギガーはルンを無視して傘でどんどん殴る。
『くそっ!あの傘さえ奪えば…』
傘でしか攻撃をしてこないガギガーを見てとっさに高校生は考えた。そして行動に移す。
傘で殴られた瞬間、高校生は傘をつかみ、強引に奪った。
同時に、高校生の脳裏に友人との会話がよみがえる。
――「その傘を奪っちまえば勝てんじゃね?」
「それがどうもそういうわけにはいかないらしいんだ。とにかくそいつは血を好み、そいつに関わったら死だ。」
「傘を奪っても無理ってのはどういうことだよ。」
「その傘は不幸の傘だ。傘男以外が持つと、その持った奴は体のところどころが無くなって死ぬんだ。あの傘には絶対に触れちゃダメだ!」――
はっと気づいた高校生が右腕を見ると、右腕が無くなり、大量の血が溢れ出ていた。
「まったくルンは…奪われるとすぐあれだ…」
ガギガーがぼそっと呟くが高校生に聞こえていない。それどころではない。
ガギガーは呆れていた。
「うわぁー!右手がぁー!」
高校生は傘を投げ、逃げ出した。
「あいつにはルンが普通の傘としか見えていないんだぜ?ルンがあいつの右腕を喰ったら、あいつは突然右腕が消えたようにしか見えないだろ。しかも痛いし。」
ルンを拾いながら注意する。
「フン。私を勝手に手に取った罰よ。それよりさっさと殺してあいつの血を私にちょうだい!」
ガギガーは、ハイハイと返事をして高校生に傘の先を向ける。
「戦う相手を間違えてるよ…さよなら…」
すると、逃げていた高校生が突然地面に倒れた。
「う…く…?」
高校生が呻いている。何が起こったのかわからない顔をしている。ガギガーも驚く。
「あり?エアショットを受けて生きてるの?」
「そんなことはどうでもいいんだよ!ガギガーさっさと切りきざみな!」
ルンがギャーギャー叫ぶが高校生には聞こえない。やれやれとガギガーはルンーー不幸の傘--を高く振りかざした。
ルンが剣へと変わった。
高校生は死ぬまで不思議なものを見ていた。
傘男と…不幸の傘…何か特別な…力が…
そこで高校生の意識は消えた。
ガギガーはルンを持って歩きだした。
その体にも、ルンにも血一滴たりとも付いていなかった。