【蝶々姫小ネタ集】この5人、9割男子【パラレル時空】
【蝶々姫シリーズ小ネタ集】
ポッキーゲーム編
「ポッキーゲームって知ってる~?」
と、俺の弟子・ざくろが赤い箱のお菓子を持ってきた。
「あ? なんだそりゃ」
俺、シャロアンスはそんなもん知らん……と言いたいが、生まれ育った娼館では確かにそんなのはあったな。人の誕生日そっちのけでやってたな。
「なぁにそれ? わたくしは知らなくてよ」
これはラゼリード姫様だ。こてん、と首を傾けている。相変わらず口より仕草の方が饒舌だ。
「俺も知らない」
パラレル時空というやつなので、大きいハルモニア陛下がいる。彼も知らないらしい。
「僕は知ってる」
パラレル時空なので、当然フィローリも参戦だ。
揃う筈の無い人物が5人揃ってポッキーゲームなんざ、地獄だろう。
「あ、フィローリ知ってる~? じゃあ説明したげて!」
面倒臭い事になったな、と往診鞄を持って逃げようとすると、ざくろが釘を刺してきた。
「先生? 今日は往診の予定無いよね? 逃亡は不戦敗と見なして罰ゲーム『鼻からポッキーを食べる』だよ」
「ちくしょう! やればいいんだろ!」
「ルールはね……」
フィローリがポッキーゲーム知らない組に説明を始める。
それを聞きながら俺は戦略を考えていた。
第1試合ラゼリードvsシャロアンス
「こう、くわえたらいいの?」
姫様はチョコレートの掛かっていないプレッツェルの方を支えながら唇に挟んだ。俺は遠慮なくチョコレートの掛かった方をくわえる。
「用意、スタート!」
ざくろの合図と共に、真ん中からポッキーが折れた。
「フッ……」
ポッキーを指で折った張本人、ハルモニア陛下は涼しい顔をしている。
「こういうゲームなの? あら、チョコレートの掛かった所も美味しい」
「いや、ちげーんだけど。これ勝負的にはどうなる訳?」
ポリポリとプレッツェルを貪りながらざくろと、フィローリに聞く。
「妨害もありじゃない? ルールには無いけどしてはいけないというルールも無いし」と、フィローリ。
「新しいルール採用!」こっちはざくろ。
みんな人前で慌てる姿なんて見せたくないだろう。ここでゲームバランスが破壊された事に俺以外誰も気付かなかった。
第2試合ざくろvsハルモニア
「ざくろ。チョコレートの掛かった方を食え」
「いいの? へーか、ありがと~!」
審判はフィローリ。「用意、スタート!」
ぽりぽりぽりぽり。
あれ、姫様が乱入するかと思ったらしない。……と思って視線を向けたら、すんげー嫉妬心剥き出しの顔でハルモニア陛下を見ている。
こっわ! 姫様の嫉妬こっわ!
仕方ない。もう少しで2人の唇がくっつきそうなところで、俺はざくろの襟首を引っ張った。
「陛下に俺のむすm……弟子!の唇はやりませんよ」と、親心を出しておく。
ヤバい。俺の娘って言いかけた。アレ男じゃん。ちゃんとついてるのも見てるのに何を血迷ってんだ、俺。
「せ~んせ~い~」とかざくろが甘ったるい声出してるのをそっと無視して、姫様に視線を送った。あからさまにホッとした顔をしている。正直じゃないなぁ。
第3試合ラゼリードvsハルモニア
これは誰も止める奴が居ないので放っておく。だって、姫様も陛下も耳まで真っ赤になったまま見つめ合い1口も齧ってないからだ。
ざくろが試合を見ているが試合は進まない。
するとぐいっと手を引かれて振り向かされたと思ったら、口に挟まれるポッキー。
フィローリが真剣な目でこっちを見ていた。カリッ、と音がした思ったら、ポッキーは俺達の間を滑り落ち、フィローリが俺に口付けていた。
ちょ、なにこれ、なにこれ。俺とフィー、キスしてる!!!?
プシューと蒸気を頭から噴いた俺はフィローリに凭れかかる様に膝から崩れた。
何こいつ、めっちゃキス上手い。
どこで練習したんだ? 姫様? 姫様か?
「(今日の僕の運勢はメロメロにしたら勝ちだって)」
嫉妬に狂ってるとまたコイツなんか小声でマウント取ってくるし。……なるほど、これも敗北か。負けでいい。もっとくれ。
「あーっ! 姫様とへーかがチューしたー! きゃーきゃーっ!」
ざくろの声に振り向いてみたら、それはもう「がっぷりと」キスしていた。
惜しむらくは2人とも口周りが食べかすだらけな事だ。残念過ぎる絵面だな。
陛下は姫様の頭に手を回して逃げられなくしている。どこで覚えたんすか、そんなテクニック。
あれ、ポッキーゲームってなんだったっけな……。
※この後、シャロアンスはざくろにキスをねだられ、逃げ回りました。