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堕天使メルフィスちゃん  作者: 百野桃之助
第一章 天界
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悪魔マルフォス


 私が黒い光の粒子となって天界から消えた、

 そして次に辺りを見回すとそこには居る筈の無い人物がいた。それはトラックに跳ねられる前、つまり前世の私の姿だった。


「あなたはだれ、私なの?」

 

 そうして声を張った私は次の光景に絶句した。私の姿であったものが徐々に蝋燭のように溶け始め、次第に形を作っていった。それはどんどん人の形に変わっていった。そして完全に形が作り終ったのかもう変形することはなくなった。


 その姿はまさに、私の前世の姿から10年以上過ごした私を悪魔の姿にしたようなものだった。

 頭からは山羊のような渦巻き状の角を生やし、背中にはコウモリのような漆黒の翼を広げていた人間だった。

 人間だった頃の白目に当たる部分は黒く染まり、黒目だった部分は真紅に染まっていた。しかし意識がないのかその瞳は人形のようにどこか虚ろだった。


「···悪魔···」


 そう言葉を溢すと彼女は意識を取り戻し、虚ろだった瞳に生気が宿り出したと思うと私に向けて話し出した。


「あら?··なんであなたは意識を保っているのかしら、面白いわね」

「あなたはいったい何者なんですか?」


 いきなり何者とですかと問われた彼女はこちらに歩いてきた。そして私の顔を覗くように腰をかがめてこちらの質問に答えた。


 「何者もなにも、ただの悪魔よ。」


 「悪魔って本当なんですか?」

 

 「えぇ、ここでそんなのつまらない嘘を付いても意味ないでしょ?第一、貴方が悪魔と言ったんじゃないのかしら」


 彼女はさも当然かのように自分を悪魔だと語った。


 「それで、その悪魔さん、ここはいったい··」


 「ここは貴方の精神世界よ。現実の貴方の体は天界と魔界の狭間に留まらせてあるわ。

 それとあまり悪魔さんと呼ばれるのは何故だがすごく嫌だし、私の名前考えてくれないかしら」


 「お名前が無いんですか?」


 そう聞いた私に彼女は首を縦に振った。

 

 「分かりました私が変な名前を付けても文句はいわないでくださいよ」


 「ふざけた名前はやめてくれるといいのだけれど」


 そんな質問を真剣そうな顔付きで威圧しながら言った彼女に私は慌てて訂正した。


 「ふざけた名前になんてしませんよ。それと貴方にとっての名前は大切なものなんですね」


 「まぁ良いわ、それでそろそろ私の名前はもう決まったの?」


 彼女そうが聞くと、私はすぐに自分の中にあった答えを出した。


 「─マルフォス─」

 

 ─そうマルフォスにその名を与えたと同時に目の前の彼女の存在感のようなものが上がり、前よりも艶が増え、髪が伸びた。その姿は以前よりも一段階大人びて美しくなったようにも見えた。


 「マルフォス···マルフォスね。なかなか良い名前じゃない、名前の由来を教えてもらえるかしら?」


 「私の天使としての名前であるメルフィスからきました。なんか似ているような名前の方がが良いかなぁ~なんておもって」


 彼女は私の言葉を聞くとそこで不思議な顔をして顔をして、首をかしげたながら顎に指を当てた。


 「天使の名前、というのはどう言うことなのかしら?」


 「あぁ、それは私が元は下界の人間だったんですよ。だけど何故か天使になってしまって」


 「あぁ、だから乗っ取れなかったのね。私は貴方の人間である魂を喰って受肉し、悪魔になるつもりだったの。」

「それで実際、喰ってみたのだけど···どうやら貴方の意識は既に天使の方の魂に移っていて、人間である貴方の魂を食ってもそれはただのお飾りだったわけなの。」


 それから、残念だわ。と小さくに呟き、先程まで不思議がっていた顔が見るからに不機嫌な顔になっていた。

 

 見た目のクールな印象とは裏腹に、よく感情を表に出す人なんですね。

 

 「それで人間の魂を喰われてしまった私はどうなるんですか?」


 「そうね···取り敢えず分かりやすく簡潔に言うのであれば、貴方は悪魔と天使が合体したような存在になるわ」


 そこで1つ在りもしないような、だが─もしかしたら在るかもしれない。そんな1つの可能性に気付いた。


 「もしかして··魔界の瘴気って平気になりますか?だって悪魔と天使が合体したならばどちらかの特性を残しているんじゃ··無いかと思うのですが。」


 何故か改めてへり下った態度をしながら質問をした私にマルフォスは、実例がこれまでなかったから分からないけれど、でも可能性は無くもないわね。と言いわずかな希望を指し示した。

 

 「話は変わるのですが、この精神世界から出られることはあるのですか?」


 「それならとっくに、準備は出来ているけど···瘴気まみれの魔界へ出る覚悟はあるの?」


 正直、私には瘴気まみれの死地に赴くような覚悟はない。だが少しでも希望が見えたのなら、それに賭けて最後まで諦めずに戦うのが私の性分だ。

 ─正気じゃない。─そんなものは無理だ。─駄目に決まっている。

 そんな考えをしてしまっては私が私ではなくなる。ここで行かなくては、自分が腐ってしまうのを知っている。

  ─さぁ行くんだ私が私であるために···


 「覚悟は出来ています」


 震えた声だった。怯えていた。だがその言葉を言い放った彼女の姿はは、今までの人生の中で一番輝いているのだった

 

「しばらくは私、あなたの精神世界に住むことにしたしたからよろしく頼むわね」

 

 その言葉が聞こえたのを最後にメルフィスの体は天界と魔界の狭間から抜け、魔界へと落ちていくのであった。

 


 

 

 

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