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堕天使メルフィスちゃん  作者: 百野桃之助
第一章 天界
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天使メルフィスの記憶

 

 私、メルフィスはあまり優秀な子ではありませんでした。何をやっても上手く行かず生まれてこのかた得意なものと言えることがありませんでした。

 勉強ではいつも平均以下、特に酷いのが運動で運動会のクラス対抗リレーで足が遅い私は皆の足を引っ張って、ビリになってしまったことを責められました。

 

 だけどそんな私にも一つだけ長所と言えるものがありました。それは私たち天使が学園の入学祝いに送られる【祝福】と言われるものでした。【祝福】とは天使たちがが使う固有の能力です。

 一人一人違った能力を持っていて戦闘用のものから日常に使えるものなど、たくさんの種類がありました。

 

 その天使固有の能力【祝福】で私はかなり強い部類の能力だったらしいのですが、その能力が強すぎるあまり、私のような普通の天使では悲しいことに力の負荷に耐えられず死んでしまうと言われてれしまい、学園ではその事が知れわたっており、私は劣等生のとしての仕打ちを受け、たびたび嫌がらせをされることもありました。


 だけどそのような事があっても私は決してめげませんでした、なんでか疑問に思う人もいるでしょう。

 それは私が7歳の誕生日の時にお母さんからもらった下界の"ぷよリス"というパズルゲームでした。そのゲームが面白く、やっている間はなにもかも忘れてゲームに集中していました。きっとそれが心の支えになったのでしょう。

 

 そして私が12歳になって修学旅行に行く事になった。行き先はなんとずっと子供の頃から行きたかった下界でり、私のクラスは日本に行く事になりました。

 班員の私含め5人で多数決を行った結果、東京に行く事に決定しました

 私はそのとき心のなかで歓喜の舞を踊っていた、何故なら私の人生の支えにもなったゲーム"ぷよリス"を作った場所がその日本の東京だったからです。

 

 

 そして私は準備を始めていた。

 え? なんの準備かって?それはですね、ずっと楽しみにしていた修学旅行の準備です。

 鏡の前で自分の赤みのかかった金色の髪がぼさついているのを確認し、身だしなみを整え、学園の白を基調とした制服に袖を通し、持ち物チャックを行った。


 「よし 大丈夫!」


 チェック表の項目に全て○印が書かれているのを確認した私はそのまま荷物を持ち、そのまま玄関のドアノブを回して外に出た。


 「行ってきます」


 「いってらっしゃい」


 いつものように挨拶を交わした私は学園に向かった。


 

 校門を抜けて転移陣に向かうとそこには、真っ赤な紙にリボンを付けたショートヘアーの少女─イレイラが佇んでおり、その後ろでは3人の班員が転移陣の前の椅子に腰掛けていた。


 「おせぇぞメルフィス、10分遅れだアタシたちを待たせんじゃねぇ」


 「え、でも予定の時間まではまだ余裕があるはずじゃないの?」


 そう聞くと彼女は軽く手合わせた。


 「すまねぇなメルフィス、アタシが作った予定表間違ってたわ。すまんすまん」


 とまったく申し訳そうにしていない表情で答えた。

 予定の15分前に着いた筈なのだがこれはいったいどういうことだろう?と考えていると答えはすぐに返ってきた。


 「ったく、のろまがお前のことは教師に報告しておいてやったから、ほらさっさと行くぞ」


 「あ··はい」


 どうやら私の予定だけ皆より25分後にずらされてしまったらしい、なぜ彼女はそのようなことをしたか、

 答えは簡単です。学園のルールで班の全てが人数が揃わなければ出発できない決まりがあるのですが、"予定に遅れた生徒には成績を下げる"という制度を作り生徒に危機感を持たせ、遅れてくる生徒を減らそうとする取り組みがあります。


 今回はその制度を利用されたということです。だけどこのようなことでめげていてはいけません。

 だってこの転移陣の先は、私がずっと憧れていた日本なのですから、このようなことで気分を害して、気持ちの上がらないまま日本に行きたくなかったのです。


そして私は

 転移陣の上に乗り私は目を閉じ下界の景色を想像しながら背中の羽を消し、私たちは転移陣から溢れる水色の光の中へと消えていった。


***


 目を開けると私はまず下界側の転移陣のあるコンクリートで囲まれた地下室から抜け出し、次に天使が人間に見つからないため秘密裏に管理する、"次元旅行会社ザ·ウィングエンジェル"とか言ういかにも怪しい名前のビルから出た。

 するとイレイラが何かを思い出したかのように手を叩き、私の方へ体を回転させた。


 「ここからは各自自由行動だ、メルフィスお前は明日の集合時間が何時かちゃんと覚えているか?」


 「明日の集合時間は確か午後5時だったね、ちゃんと覚えたよ」


 私がそう言うとイレイラは笑顔を浮かべ


 「じゃぁな」


 そう一言だけ告げ彼女達4人組は私の行く道と反対方向に歩いていった。

 ─よーし、いろいろなところを巡るぞ!

 

 まず最初に私が向かったのがスカイツリーです。スカイツリーほど高い建物は天界にはなくその大きさや迫力に触れてみたくて最初の目的地をここにしました。

 ─おっきいですねぇ~


 その次に私が向かったのは東京駅です。スカイツリーからは少し遠かったですけどそこでいろいろなものを食べたかったので、仕方ありませんね。

 そして駅の中で満腹感を感じる頃には、既に日が暮れていたため私は急いで学園が用意してくれたホテルに泊まり夜を過ごした。

 ─満腹、満腹


 そして次の日の朝、早速部屋を出て2日目の目的地に向かいました。

 まず始めに私が向かったのが"ぷよリス"のグッズを売っている店で、1人のファンとしてこの場所には訪れておきたかったのです。


 そこでの買い物を済ませ次の目的地へと私は足を進めた。


  そして次の目的地はを動物園です。なんとここではパンダが見られると聞いたのでここに決めました。

 その動物園でいろいろな動物を見た私は不意に持っていた懐中時計で時間を確認すると、そこに記されていた時間は4時50分となっていた。

 

 ─まずい、このままでは予定時間に遅れてしまう─と考えた私は急いで旅行会社に戻ろうと必死になって走った。

 

 そして私が旅行会社に向けて走っている途中、奇妙なことが起きた。体が徐々に動かしずらくなり、動かなくなった部分が勝手に動き出した。

 ゆっくりとゆっくりと体の自由を奪われる感覚に怖くなり、20秒もしないうちに体は私の言うことを聞かなくなった。

 すると奪われた体どこかに走りだして急に止まった。動かない体で周りを確認すると、私の居る場所は横断歩道の真ん中だった。


 絶望した、それは私が轢かれて死ぬことに─否、死んだあと天界へ強制的に送られることに。

 天使は下界で死ぬと強制的に天界へ引き戻され、体を癒されて何事もなかったかのように天界で普通の生活を送れる。

 

 だがそれを目撃した人がいる場合は別だ。天界の掟に則りで罪に問われるのだ。

 ─私はそれが怖かった。

 天使は罪を犯すと、【堕天使】の烙印を押され、天界には行けない呪いを魂に刻み込まれる。挙げ句の果てには【魔界】と言う悪魔が蔓延っている瘴気まみれの場所に堕され、永遠に瘴気の毒を浴び続けるという罰を受けるのだ。

 しかもそこで死んでも天界には戻れず、また魔界で復活するという。人間でいうところの死刑よりも更に上に位置する罰だ。

 

 そのぐらい天使がこの世にいるということを証明してしまう行為は、天界では厳しく罰せられるのだ

  ─どうしようどうしよう··このままじゃ···· 

そんな思考に巡らせていると横から声が聞こえてきた。


 「そこは危ないからこっちへ来なさい」


 「…………」


 返事をしたくても体を自由に動かせない。─声が···出せない··

 すると急いでこちらに来てくれた人が私の手を掴んだ。─これで一旦横断歩道から抜け出せる。

 そのようなことを考え安堵した直後だった、まるで運命が私の死を望んでいるかのように背後からブレーキ音が聞こえてきた。

 


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