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1 ねえ。一緒に帰ろうよ。

 福の神


 ねえ。一緒に帰ろうよ。


 なんだかとってもわくわくするね。


 あー、悪いことしちゃいけないんだよ。


「おはよう。気持ちのいい朝だね」

 そう言って野口福は同じ小学校に通っている、同じ六年二組の教室の町田宝くんに朝の挨拶を元気にした。

 でも、宝くんは無言のまま、福の挨拶を無視した。

 そんな宝くんのそっけない態度を見て、福はもちろん内心すごく腹を立てたのだけど、……怒らない、怒らない、といつものように魔法の呪文を自分の頭の中で唱えることで、いつもの明るい笑顔のままでいることに成功した。

「うるさいな。あっち行けよ」

 ようやく福を見て、宝くんは福に言う。

「そんなこと言わないで一緒に学校まで行こうよ。そのほうが絶対に楽しいよ」とにこにことした笑顔で福は言う。

 福は小学校の学級委員をしている真面目な女の子で、尊敬している担任の南雲先生から、教室の問題児である宝くんのことをしっかりと見張っているように、と先日頼まれたことから、その言葉通りに福はずっと宝くんのことをこの数日間の間、こんな風に付きまとうようにして(宝くんがわるいことをしないように)見張り続けているのだった。

「お前、なんなんだよ」

 電車の席に座って、すぐに隣の席に座ってきた福に向かって宝くんはそういった。

「気にしない。気にしない」福は言う。

「お前、なんで最近、俺にずっとついてくるんだよ?」怒った顔をして宝くんは福に言う。

「気のせい。気のせい」

 ふふっと嘘の笑顔で、にこにこと笑いながら福は言う。

 そんな福の笑顔を見て、宝くんはなんだかすごく嫌そうなかをして、それからぷいっと福から顔を背けるようにして、反対側の席のほうに顔を向けてしまった。

 ……よし、今日も今のところ、問題なし。

 そんなことを福は宝くんの隣の席で思う。今の福はこんな風にして、宝くんを見張って、宝くんがなにも問題を起こさないようにして、そのあとで、尊敬している南雲先生から「頑張りましたね、野口さん。とても偉いですよ」と笑顔で褒めてもらうことしか、その頭の中にないのだった。(こんな風になにか一つのことに夢中になると、そればっかり考えてしまう、と言う悪い癖が福にはあった)

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