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かけおち悪女、信じる

「え、えーと、それには深い事情がありま……く、くしゅん!!」


先程までは気付きませんでしたが、この部屋、結構寒いです。


「……ちょっと待ってて下さい。私の服を貸しますから。」


わたくしのクシャミを見たその女性は、部屋へと入ってきました。

そして、白くて大きな木箱の、引き出しを開けてガサゴソと何かを探し始めました。

こ、これは、ケンゴの描いた漫画で見たことがありますわ!

タンスという、服を収納するケースだったはずですわよ!


「あ、あったあった。これならお姉さんにも着れると思うから。」

そう言って、わたくしに服を手渡してくれました。

「あ、ありがとう。」

受け取って広げて見ると、白くて柔らかいワンピースと、これは…ベルトという物ですわね。

「じゃあ、部屋の外に出ておきます。着替え終わったら呼んで下さい。その後、事情を聞きますね。」

女性が部屋から出て行くのを見届けてから、わたくしは手に持ったワンピースとベルトをもう一度見ました。

こ、これ、わたくし1人で着られるのかしら…??



「着替え終わりましてよ」

どうにかこうにか着替え終わり、部屋の外へと声を掛けます。

…ふぅ、なかなか手こずってしまいましたが、無事に着れたわね。


女性が、再び部屋の中へと入ってきます。

そして、わたくしの姿をじっと見て、実に可愛らしく微笑みました。

「うん、似合ってますね。」

しかし、それも一瞬で、すぐに表情を変えます。

「それで、事情というものを聞かせてもらいましょうか。」




わたくしはその後、この部屋に入ってしまうまでの事情を、いくつか掻い摘んでお話しました。

『異世界』や『ワープ』というワードに、女性は信じられないとでも言うように眉をひそめましたが、それでも、最後まで話を聞いてくれたのです。


「そうですか。ちょっと信じられない話だけど…でも、嘘を言っているようには見えないから、とりあえず信じます。」


話を聞き終わった女性は、そう言って、わたくしの手を握りました。


「それに、私、考えたんです。」


そこまで言うと、女性は小さく息吐いて、何かを決意したような表情になります。


「お姉さんは今困ってるんですよね?…知らない世界に飛んできて、かけおちの相手を探すのも一苦労なんじゃないですか?」


だったら、と女性は続けます。


「私が、お姉さんの恋人探しを手伝ってあげます。家にも置いてあげます。その代わり、私の話を聞いて、できるだけそばにいて下さい。」


恋人探しを手伝い、さらに家にも置いてくれる…?

まさかそんなことを言ってくれるとは思わず、驚きました。

それに、その条件が、話を聞いてそばにいるだけだなんて。

もちろん、それが本当かどうかだなんて分かりません。

騙して、わたくしを売るつもりなのかも…とか、色々な悪い想像が頭をよぎりました。

『信じます。』

それでも、先程この女性は、わたくしの言葉を、とりあえずでも…信じてくれました。

なら、わたくしだって、信じないと。


「ありがとう。どうぞ、よろしくお願い致しますわ。」


異世界に飛ばされてから、初めてニコリと笑ったわたくしに、女性も嬉しそうな顔を浮かべたのです。 

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