かけおち悪女、生まれて初めて叫ぶ
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『おい悪女!国の未来を背負っている自覚はなかったのか!?』
『国民のことなんて何にも考えていない悪女め!!』
『お前なんか尻軽の悪女だ!!!』
男性、女性、老人、子供、綺麗な身なりをした者に、ボロボロの服を着た人。
数え切れないほどの人達が、わたくしを取り囲んでいます。
その誰もが、わたくしを睨み、軽蔑し、そして、わたくしを悪女だと呼びました。
今日は、追放をされる日です。
隣国の第一王子と婚約関係にありながら平民に恋い焦がれ、あわや戦争を起こしかけた、わたくしの。
「カタリナ。準備はいいか?」
元婚約者エルネストからの言葉に、わたくしは力強く頷きました。
「もう一度だけ言うが、これからカタリナが追放されるのは異世界だ。しかし、危険な世界に飛ばされることはないように調整している。」
そこまで言うと、エルネストは右腕を空へ伸します。
これは、今から追放のための儀式を始める、という合図だそうです。
その合図を見た国民達が、わあっと沸き上がります。
「カタリナ………もう一度、恋人に会えたらいいな。」
エルネストは、寂しそうな顔でそう呟くと、しかし次の瞬間には表情を変え、叫びました。
「今から罪人の異世界追放を行う!全員呪文を唱えよ!!」
エルネストが呪文を唱え始めると、後ろで待機していた魔術師達もそれにならいます。
異世界追放のための呪文は、とても長いようです。
その間のわたくしには、たくさん考える時間がありました。
この世界であった、楽しかったことや辛かったこと、幸せだったこと。
しかし、頭に浮かんでくる思い出は、愛する恋人のことばかりです。
どうか、どうか。
次の世界でも、愛する恋人…ケンゴと出会えますように。
気が付くと、エルネスト達の呪文は終わっていました。
あら?と違和感を覚えて、自分の体を見ます。
わたくしの体は、足先の方から、ゆっくりゆっくりと消えていっているようでした。
ふと、体が温かくなります。
気が付くと私は、エルネストに抱き締められていました。
うぅっという嗚咽が聞こえて、ああ、泣いてくれているんだ、と寂しい気持ちになり顔を見上げます。
………い、いえ!?顔を見たらとてもにやけていらっしゃいますわね!?
…そうして、謎ににやけているエルネストは、私の耳元でこう囁いたのです。
「危険な世界には飛ばないように調整した件だけど、そのせいで、もしかしたら服だけここに残っちゃうかも。」
「……はい??」
服だけ、ここに残っちゃう?
「向こうで素っ裸だったらごめんね!」
向こうで、素っ裸だったら、ごめんね……?
言葉を理解したわたくしは、思わず叫んでいました。
「えええええええええええ!?」
わたくし公爵令嬢として産まれて、こんな風に叫んだのは、これが初めてのことです。
それから、わたくしの服がこの世界に残ってしまったかどうかは…お察しの通りでございます。
私の体が完全に消えた後、パサリとその場に落ちたドレスに、その場に居た者は顔を赤くしたそうな。