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部下からうつ病を心配された

作者: 川里隼生

「最近、朝早くに目が覚めるんだよ」

 職場の休憩室で最近の悩み事を話してみた。

「寒くなったからですかねぇ」

 去年入社した若い社員にそう返された。

「そうかな。まあ、歳だからってのもあるかな」

 少し笑いを含めてみた。彼女との接し方がいまいちわからない。静かな人物、という特徴しか未だに掴めていない。


「もしかして、うつ病じゃないですか」

「うつ病?」

「ええ。ネットの情報ですけど、うつ病の人は眠れなかったり、食欲がなくなったりするらしいですよ。店長は忙しいでしょうから、ストレスとか溜まってませんか」


 部下から健康の心配をされたのは初めてかもしれない。少し嬉しい。

「いやいや、心配してくれなくても大丈夫だよ」

「別に心配してる訳じゃないですよぉ」

 からかわれたと思われたか? やっぱり扱いが難しい。


「お子さんの成長とか、一見いい事でもストレスになる場合もあるらしいですよ。……自殺はそれなりに勇気がいることなので、普通なら中々実行しませんけど、お酒飲んでたら判断力が低くなります。だから飲み会の後に自殺は考えないでください」

 充分すぎるくらい心配してくれているじゃないか。そう言いたいけどやめておこう。わかった、とだけ答えた。


「ところで、なんでそんなに詳しいの?」

「全部ネットで調べました。私だって立派な現代っ子です」

「どうしてうつ病なんて調べたの?」

 少々、思案しているような間が空いた。

「私が興味のあることを調べちゃ、いけませんか」

「いや、そんなことはないけど」


 その興味という言葉は『知らないことを知ってみたい』という意味だろうか? それとも『自分が置かれている状況がわからない』という意味? もし後者なら、彼女は少なくとも一度は自身をうつ病と疑ったことがあるということになる。そういえば、彼女は感情表現が乏しい。今日もずっと平坦な声で会話している。


 彼女に医師の診察を受けるよう勧告すべきだろうか。

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