オ互イノ紹介
「まぁそういうことね。で?これからどうするの?」
「どうとは?」
なんだこいつ、まさかついてくる気か?確かに細長いを持っているがあの中に武器でも入っているのか?その割に防具とかは見当たらないが。
「調べるんでしょ?この場所を、私もご一緒するわ。」
「ここまで着いて来てんだ。今更引き返す気なんてないだろ。」
「分かってるじゃない。」
女は満足そうな笑みを浮かべ箱を開け、武器を取り出しはじめた。細長いものが中から出てくる。あれは弓?いや
「アーチェリーか。」
アーチェリー、確かに腕前のほどは知らないが、わざわざこんな場所に持って来ているんだ。自信はあるんだろう。後ろから矢を打たれるのは、怖くはあるが確かに遠距離攻撃があるのは頼もしい。
しかし防具が見当たらないが着けないのだろうか?まぁ敵に近づかないように立ち回れば大丈夫だろうが。
「お前、防具はないのか?」
「ちゃんとあるわよ。ほら。」
そういうと女は、箱の中から防具というには少し頼りない装備を取り出した。
「それちゃんと攻撃を防げるのか?」
「ふふっ、そもそもこれは敵の攻撃を防ぐような物ではないの。矢を打つ時の摩擦から身を守るための物だからね。攻撃は当たらなければどうということはないわ。」
女は口元に手を当て、笑みを浮かべながらそう言った。
なるほどな、はなから攻撃をくらうつもりはないということか。それならあの装備でも十分だろう。俺も準備を始めるとするか。
「あなたのそのバッグと細長い袋、あなたはおそらく剣道よね?その袋に真剣でも入っていれば頼もしいのだけれど。」
「バーカ。そんなもん持ってるわけねーだろ。持ってたとしても使えるかどうか分かんねーよ。」
真剣か、あれば良かったがさすがにこの短時間では手に入らなかった。確か実家の方に日本刀があったが、模造刀か真剣かも分からないしな。帰ったらネットで調べてみるか。
さて俺も防具出して準備するか。
「防具をつけるのも久々だな。」
「あら、ここにくる前に試しに着けてないの?」
「あぁ忘れてたんだ。まぁ小さいころから何年もつけてんだから大丈夫だ。付け方は忘れてねぇし、むしろ防具を着てた方が落ち着くまであるよ。」
大学まで着ていたのだ。数年着てないだけで、着方は忘れないし、着けた時の感覚すら鮮明に覚えている。
俺はまず、外側と内側の紐をしっかり結び、剣道着を着た。次に前帯を後ろで結び、腰板を着け、垂と胴を着けた。最後に手ぬぐいを頭でしばり、面と小手をつければ完了だ。
俺は静かに正座をし目を閉じ、息を吸った。
「すっー、よしっ。」
「へぇ、様になってるじゃない。とううんっていうのねカッコいい名前じゃない。」
「しののめな、東に雲でそう読むんだ。東雲凛それが俺の名前だよ。」
そういえばこれだけ話をしているのに、まだ名前すら聞いていなかったな。
「あんたの名前は?」
「言ってなかったわね。わたしの名前はレイラ。レイラ・レスティールよ。」
「どこの国の人なんだ?ハーフか?」
「ヒミツよ。女は秘事があった方が美しくなるもの。」
レイラは怪しげな笑みを浮かべながらそう言った。
そんな言葉も聞いたことはあるが疑わしいものだ。確かに見た目は信じられないほど整っているが、ただでさえ後を付けられて不安になっていたのに、出身地すら喋らないとはいかがなものかと考えていると。
「何してるの!先に行くわよ!」
「おい待てよ…」
自分勝手なやつだ、まぁここに留まっていても仕方がないし着いていくとするか。
凛はすぐに木刀を袋から取り出し、帯の間に挟み歩きはじめた。
「おい、お前弓の腕前はどうなんだ?」
「あら、凛くんせっかく名前を教えたのだから名前で呼んでほしいわ。そうね、味方への誤射はしない程度の腕前はあるつもりよ?」
「俺が動いていてもか?」
「問題ないわね」
本当だとしたら相当な腕前だ。目の前で動き続ける味方に当てずに敵に当てるというのは至難の技だろう。敵に当たらなくても、自分への誤射がないだけで十分だ。もともと一人でやろうとしていたのだから。
それにしても不気味だな。ライトがなくてもギリギリ見渡せるが、あった方が確実に便利だ。
しかしなんなんだここは?誰かいたのか?渋谷駅の隠された部分ということはないだろう。範囲が広すぎる。こんなところを隠しておけるスペースは渋谷駅にはなかったはずだ。
「ここはなんなんだろうな。」
「あら?異世界、またはダンジョンと考えるのが妥当じゃないかしら。駅にはこんなところが入るスペースはなかったハズよ。」
「まあ、信じられない話だけど、あのゴブリンのような怪物やら壁をすり抜けたりもしたんだから、あながち間違いでもないか。」
周囲は、瓦礫が散乱していたり、店のような形跡もあったが完全に廃れており、中には何もなさそうだった。違うところを見ながら奥に進んでみるかと思った、その瞬間なにかが動いた。