突入ト遭遇
壁の奥はすぐ階段だったようで、転げ落ちた先は薄暗く、まるで寂れた地下商店街のようになっており、酷く不気味な雰囲気が漂っていた。ライトがなければ危なかった。
「おいおい、どこだよここ。ヤベェよ。」
「本当に入れると思ったあなたが、一番やばいのだけれどね。」
だれだ!?驚いてすぐにライトを取り出して後ろを振り返ると、そこには金髪を腰まで伸ばした、瞳が青く、肌の白いこの世のものとは思えない美しい女が立っていた。
「ぁっああっ…………」
「?」
驚きすぎて声が出ない俺を、女は不思議そうに見つめていた。
「ふふっ、なにかしら?そんな化け物でも見るような顔をして。」
「なんでこんな所に人がいるんだ!!」
「あら?おかしな話をするわね、ずっとあなたの後ろにいたわよ。あなたがホームにきたときからね。」
「は?」
いや、俺はたしかに周りを見渡し、付近には誰もいなかったはずだ。しかもなぜわざわざ俺の後をつけてきた?しかもこんな時間に。
「私もいたのよ。あの怪物が電車に轢かれるその瞬間にね。」
「いや、だけどその瞬間を見たからってなぜ、俺の後をつけるような事をした!あの時、他にも大勢利用者がいただろう!」
「その理由はあなたが一番分かってるんじゃなくて?真っ先に異常に気づき声をあげたからよ。」
たしかに、あの時真っ先に異変に気付いたのは自分だ、しかしそれだけで朝の5時から人を待つか?
しかもなぜ来る時間が特定できたんだ。おかしいだろう、俺のように直接、化け物が壁から出てくる所を見たわけでもないのに…、いや見たのか?
「お前も化け物が壁から出てくる所を見たんだな?」
「いいえ、見てないわ。残念だけど私は少し後ろの方にいたからね、壁の様子までは見れてないわ。だけどね、予測は立てれるのよ。なぜ、あなたが最初に異常に気づいたのか、何故あの化け物の姿を見た人が少なかったのかを考えればね。」
女は得意げに語り出し、凛はそれを黙って聴いた。
「何故あなたが最初に気づいたのか、これは簡単よ。単純に異変があなたの目の前で起こったからだわ。だけどね次が問題だったのよ、何故あの化け物を見た人が少ないのか、また見た人もあなた以外気のせいだと思ってるわ。これは荒唐無稽な話で自分でも信じられなかったけどこう考えるしかなかった。」
女は淡々と自分の考えを話していった。
「あの化け物は一瞬で現れた、もしくは物陰に最初から潜んでた、そう例えば線路脇の待避所とかからね。」
「だけど線路脇の溝は、そんなに深いものじゃないぞ、暗くて見えにくくはあるが、誰かがいればすぐにわかる。」
凛は女に対して、その予測の仕方はおかしい事を指摘した。誰かがいればすぐにわかるのに、誰も気づかなかった、ましてや化け物の存在に気づかないなんて矛盾しているからだ。
「そうね、だから私はもう一つの仮説を立てた、その待避所になんらかの手段で途中から、具体的には電車がくる直前で現れた。」
「そんなことは普通に考えたらありえない。だから私は化け物が轢かれた瞬間ある人の事をずっと見てたの。誰だかわかるかしら?」
「…俺か。」
凛は一拍間を置いてそういった
「そう、最初から見ていたあなたなら何かを見たんじゃないかってね、そしてあの化け物が轢かれた瞬間、周りの人はもちろん轢いた電車を目で追ったり、目を伏せたりしてたわ。反対側のホーム下の待避所を見ていたあなたを除いてね。」
「なるほどな、それが分かったから、こんな時間からあんたはいたわけか。待避所を調べるために俺が人が少ない時間を狙ってくるだろうと考え、いたら怪しまれる深夜でもなく、人気が多い日中や終電でもない、始発の渋谷駅に。」