きっとそれは何かの始まりで
リハビリを兼ねた習作ですが、お気が向いたらどうぞお読みください。
切欠は、隣の県のあるテーマパークであった一年前の出来事。
中学生だった私は、女友達と二人であるアトラクションで並んでいたのだが、そこは長蛇の列。
途中にある階段の所に列が差し掛かった時に列の人に押されるようにぶつかって、私は段差から落ちそうになった。
たまたま直ぐ後ろに私と同じぐらいの年齢のカップルが並んでいて、男の子の方が咄嗟に片手で階段の手すりを掴みながら私の背中に逆の腕を回して抱きかかえる様に支えてくれたので、大事には至らないですんだ。
慌てふためく友人と、階段から転げ落ちそうになった恐怖と突然の事に茫然自失としている私。
私を支えてくれた男の子は、そっと私を立たせてくれようとしたが、ショックで足に力が入らずまともに立てない私の腰に手をそえて支えてくれた。
気遣うように言葉を掛けてくれる"彼"は、その言葉と人懐っこい笑顔で不思議と私に安心感をもたらせてくれる。
いかにもスポーツマンという感じの短髪と日に焼けた肌。
特別イケメンとかではなかったが、その顔を見た私の心臓が飛び跳ねるのを自覚する。
一目惚れなど今まで一度も経験したことが無い私でも、この瞬間に恋に落ちたことが分かった。
その後、私もどうにか一人で立って歩けるようになり、お礼を言ったり言われたりと多少の会話はあったにしろ、元々は赤の他人でありあちらは男女の二人組でこちらは女二人組。
"彼"の連れの女の子があまり会話に乗り気でない態度だった事もあってか、直ぐに会話も途切れてしまう。
"彼"は初めての一目惚れでまともに相手の顔を見られず挙動不審な私を、転落しかけた動揺から立ち直っていないとでも思ったのか、気遣うように何度も話しかけてくれたのだが、私は生来の引っ込み思案でありこの状況で自分から楽しく話しかけるとか出来る訳が無い。
お互いなんとなくそのままアトラクションが終った後は会話も無く会釈程度で別れた。
私が友人を撮る振りをしながらその"彼"を隠し撮りしたのも、テーマパークという非日常でのちょっと舞い上がった行動で、後々での甘酸っぱい思い出になる程度の事。
友人とその画像を見ながらキャッキャッと騒いで終るはずだった。
そうなるはずで、いくら夢見がちの乙女思考が強いって言われる私だって、それに続きがあるとは思ってもいなかったわよ。
翌春の高校入学の日に、初めて入った教室で"彼"の顔を見るまではね……
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放課後、三階の教室の窓から見下ろす校庭のサッカーコートでは、サッカー部の男子が部活動に励んでいる。
ちなみにこの高校の部活動は自由参加で、私は帰宅部。
夏休み前の初夏の日差しの中、私と違って彼等は汗にまみれた爽やかな青春ってやつを送るのだろう。
クラスメイトの大半は既に部活に行ったり帰宅したりで、教室の中には帰宅前のちょっとしたおしゃべりを楽しんでいる数名の生徒しかおらず、私のことを気にする人もいない。
まあ、お陰でゆっくり校庭など眺めていられるのだが。
このまったりとした空気が癒されているようで、けっこう好きだったりする。
「晴ー、なにやってんのー?」
そんな感じでまったりとしていると、同じクラスの佳穂に声を掛けられた。
私と同じ中学出身で、親友と言って良い関係だ。
ちなみに私の名前は晴海で略して晴。まあ、呼ぶのは佳穂ぐらいだけど。
さっきまで教室にはいなかったはずだから、教室外のどっかで駄弁っていたんだろう。
「別に……」
佳穂の問いかけにキチンと答えるでもなく、そのまま外を見たままの体勢でおざなりな対応。
今は気分良く外を眺めているんだから、邪魔をしないで欲しい。
「ふーん、何を見てるのー?」
そんな私の対応を気にするでも無く、佳穂は窓際にある私の席に寄って来た。
そして、席に座ったままの私の頭越しに窓の外を見下ろす。
「あ、サッカー部か」
私が"誰"を見ていたのか気付いたのだろう、ニヤニヤした顔でヒトの顔を覗き込んできやがった。
言いたい事はなんとなく判るのだが癪なので無視。
「まったく、こんな所で乙女ちっくなことしてんなら、マネージャーにでもなって近くで見てればいいのに」
「うっさい」
本当に癪だが、自分でも呆れるくらい私は乙女だったらしい。
おかげで、言い返す言葉にも力がない。
「ま、あんたの場合はマネージャーになったらなったで、周りが変な心配そうだけどねー」
いや、あんた本当に煩いから。
私がマネージャーとか似合わないとか、そんな事は自分でもわかっている。
「まあ、私はあんたが大丈夫か、そっちが心配になるけど」
あ、佳穂はそっちを心配してくれるんだ。
自分で言うのもなんだが、私は平均以上に見栄えは良い方だったりする。
ただ、その方向性とやらが、良く言ってキツメ系美人、ぶっちゃけ女王様系なのだ。
同性にも褒められる平均より長い足と、ちょっと釣りぎみの目がどうも印象に残るらしい。
更に、実家が古武道の道場だったりして、子供の頃からそっちの武術の修行というか修練をやっていて、それなりの実力も付いており女子部の指導者をしている。
うちのじーちゃんやとーちゃん、結構ガチで私に稽古を付けてくれたからな。
あれ、幼少からやっていた私だから当たり前の事だと思って乗り越えたけど、他の普通の家の人だったら男女関係無く逃げ出していたと思うぞ!
その為なのか、なんか武道者特有の変な空気を醸し出したりしているらしい。
佳穂もうちの門下生だったりするんだけど、なんだろうこの違いは。
ちなみに佳穂は、童顔ゆるふわ系の可愛いらしい感じだったりする。
決してロリではない!とは本人の談。
まあ、佳穂の場合は外見で寄ってくる勘違い男や逆恨み女とかの実力行使から身を守る為で、そこら辺の一般男子よりちょっと強い程度だからかな。
えっ?私の実力?
その辺のちょっと腕力自慢の男子だったら即制圧できますが、何か?
見た目は筋肉ムキムキとかじゃない、普通の女子高生ですよ?
見た目はね……と佳穂も言っているし。
閑話休題。
まあ、私の外見を端的に表しているのが、この高校伝統の新聞部&一部有志の主催による、ゴールデンウィーク明けに実施される「なんでもランキング」というものがある。
私は「ヒールの似合う女子」と「鞭の似合う女子」の2部門で堂々の1位。
全学年を対象にしたランキングで入学一ヶ月そこそこの新入生なのにね!
投票した奴ら、踏みつけてなぶってやるからそこに直れ!
一部の人たちにはご褒美になりそうだから、出来ないけどね!
あっ、補足で「女王様な女子」と「逆らっては駄目な女子」では2位だった。
この2部門とそれ以外に「眼鏡が似合う女子」「冷笑が似合う女子」「口調がきつい女子」「眼つきのキツイ女子」「高嶺の花の女子」で1位になった生徒会副会長にはもの凄く興味を持ったけど。
良いところのお嬢様で婚約者がいるとか、勘違いした男がしつこく迫っていたらいつの間にか校内から消えたとか、色々な噂が聞こえてきたけどね!
因みに佳穂は、「妹にしたい女子」と「ロリっこな女子」で1位、「恋人にしたい女子」で5位らしい。
そして、幼稚園の頃からの幼馴染と3年前から付き合っている、いわゆる彼氏持ちである。
私は年齢=彼氏いない歴だよ!
くそ、このリア充が!
私も同性に「お姉さまになって下さい」って言われたことならあるけどね……
ついでに「お姉様と呼びたい女子」では、生徒会副会長に次いで2位。
そして、一応私の名誉の為にも言っておくが、普通のミスランキングでベストテン入りしているからね!
私と佳穂も。まあ、副会長が1位でしたが。
副会長、マジぱねぇっす。
さて話を戻すと、そんな私がマネージャー的なことをやろうとすると周りの男子が萎縮したり逃げる。
実例をあげると、中学の時の球技大会で、クラスの男子が競技を終えて戻って来た時に何人かの女子でタオルを渡すことがあった。
その数ヶ月前に、ある腕力自慢のクラスの男子が同じクラスの女子に威圧的にしゃれにならないセクハラをしたので、衆人環視の中で一方的に制圧したばかり。そのセクハラを街中でやったら即逮捕ってレベルだから実力行使したんだけどね。
そんな事があったばかりだからか、クラスの男子達は私に萎縮しまくり。
私がタオルを渡そうとした、ある気の弱そうな男子の一人なんて涙目でした。
てか、そんな反応された私も内心で泣きそうになって、軽いトラウマになりかけたけどね!
居た堪れなくなって私はその場を離れたんだが、それに気付いた佳穂が男子に何かを言ってくれたらしく、その後はそんな反応されなくなったんだ。
仕方が無いって言えば仕方が無かったのだけど、ちょっと思春期の女子中学生にはきつかった。
まあ、そんな感じで私自身も古傷をえぐりそうなので、マネージャーとか出来ないだろうけど。
そんな昔に思いを馳せている私と佳穂。
相変わらず、二人して教室からサッカー部を眺めていると佳穂から更に話しかけられた。
「竜次ってサッカー部じゃない?」
竜次くんというのは、佳穂の彼氏だ。
私や佳穂と同じ中学出身。私にとっては、友人枠に入る付き合い。
「知ってるけど、それが?」
「誰かさんが見詰めている人もサッカー部でしょ」
この場合、無言は肯定なのだろうけど無視。
てか、そんな簡単に頷けるか!
「来月の夏休みにサッカー部の一年何人かで某遊園地に遊びに行く話しがあるらしんだけど?」
いや、なんでそこで疑問系になる。
「それで?」
とりあえず、続きをうながす。
「男だけで行くのも嫌だって事で、彼女持ちは彼女と一緒に参加の上、彼女の女友達も連れて来いって事になったんだって」
佳穂の話に思わず反応してしまい、肩がピクリと動いてしまった。
だから、その悪そうな笑顔やめなさい!
「で、竜次と達哉くんも参加するみたいで、私も竜次の彼女として誰か女友達連れて参加しないといけないみたいなんだよね?」
まあ、ここまでくればわかると思うが、達哉くんとは私が見詰めていた彼である。
そして、もちろん冒頭の"彼"でもある。
ついでに、その時に一緒にいた女友達は佳穂である。
くそ、これは私からお願いしろってことか!
「ふーん、べっ別に一緒に行ってあげても良いけど?」
自分で言っておいてなんだが、なんだこのツンデレ的な発言は!
言った瞬間に羞恥で顔が赤くなるのがわかる。
「まあ、あんたじゃそれが精一杯か」
そして、佳穂の呆れたような返しに更に自己嫌悪に陥る私がいた……
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そして、あっという間に遊園地で遊ぶ当日になりました。
目的地は何の偶然か、達哉くんと出会った件のテーマパークです。
県外なのになんでだろうね?
まあ、地方的にはテンプレかもしれないぐらいには有名な場所だけど。
いや、きっと神様のお導きに違いない!
運命って本当にあるのね!!
あ、すいません。
ちょっと現実逃避してみました。
現在、目的地に向って電車での移動中です。
そして、私は座席の端になったのですが唯一の隣はなぜか達哉くんです。
達也くんの次に竜次くん次が佳穂です。
いや、なんか座り順おかしくね?
竜次くんが良い笑顔で私の隣に達哉くんを押し込んでいたのは気付いていたけどね。
私の気持ちに気付いているからなぁ、竜次くんなりの私への援護射撃なんだろうと最初は思ったけど。
しかも朝が早かった為か、寝不足モードの達也くんは私の肩でご就寝です!私の肩で!!
大事なことなので二回言ってみました。
達哉くんって朝が弱かったのね。朝練とか大丈夫なのかしら?
達哉くんが望むならモーニングコール毎日入れてあげるのに。
いや、そうじゃなくて、これで平静でいられる訳ないじゃないですか!
今の私は硬直したまま身動き一つ出来ない状態になっています。
救いを求めて佳穂に視線を飛ばすと、すっごく良い笑顔をしていました……
スマフォでもSOS入れたのに、画面見て普通にしまって終わりですか?
そして、そのまま竜次くんと二人の世界に入り込んで会話を始めています。
うん、納得したよ。
達哉くんが朝弱いの知っていた上でこうなる事を予想したからこの席順な訳ですね……
私に対するアシストという建前の下、二人でいちゃ付きたかったんだな!
しかし、皆で遊びに行く時ってテンション上がっているから、朝から眠る人ってあまり見ないよね?
達哉くんは本当に朝が弱いのか、昨夜に眠れない何かがあったのか?
理由はさておき、私はどうすればよいのだろうか?
いやね、となりの人が寝てしまって更にその向こうのカップルは二人の世界に入って会話しているんです!
本来会話してくれるはずの相手が、私の緊張の元だったりするこの状態。
でも、人間って慣れる生き物なんだね。
いつの間にか彼の頭に寄りかかる様にして一緒に寝ていました……
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さて、無事に目的地前の駅に到着。
目的地の一駅前で佳穂に起こされて、やたらニヤニヤした笑顔されたけどね!
今その手に持たれているスマホには嫌な予感しかしないんだけどね!!
なんで、竜次くんとデータのやり取りしているのかな?
ついでに、達哉くんが私の肩で寝たときに、私がスマフォでSOS出したのにサクって無視したよね?!
佳穂が竜次くんとのデータ送信も終わったのかこっちに寄って来た。
「佳穂、その写真がSNSとかで拡散された暁には、データごとそのスマホは大破していると思ってね?」
「えっ?」
あっ、佳穂が固まった。しかも、若干顔が青ざめているね。
今の私はとても良い笑顔をしている自信がある。
「いや、だって下手に校内に拡散したら達哉くんに迷惑かかるでしょ?とりあえず、どんな写真か見せなさい」
うん、涎は垂れていないし寝顔が見苦しいとか言われた事はないので、自分で言うのもなんだがそれなりに微笑ましい写真だ。
特に問題がない写真に見える。
一点、達哉くんは私の肩を枕にしていて私は達哉くんの頭を枕にしている事がなければね……
うん、ちょっと私もその写真は欲しいな。
「とりあえず、そのデータを私にも渡して消去するなら……」
「いや、あんたも欲しいんかい!」
私のセリフに被せて突っ込みしてきたな。
「知らない人が見たら普通に微笑ましいカップル写真だよ? 妄想女子の私にとって、これはお宝だよ?」
さすがにこれが拡散すれば、達哉くんもからかわれたりして嫌な思いするだろうけど、私のお宝コレクションにするのには問題ないよね。
「別に無差別に拡散させる気はなかったけど、うん、あんたはそういう子だったね……」
なぜか佳穂がため息をついているんだけど、失礼な奴だな。
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馬鹿な会話をしながら入場。
ここで改めて参加者の確認というか、自己紹介が始まりました。
サッカー部1年の男子8名、その彼女とその女友達と部員の妹で女子8名。
おや、男女の人数が一致したな。
そして、竜次くん情報によると、兄妹とカップル以外は友達以上恋人未満のカップル予備軍とのこと……
おい、浮いているの私と達哉くんだけじゃないか!
その事を、佳穂に詰め寄ってみたら、何故か可哀想な子を見る目で見られた。
えっ、なんで?
その向こうで、竜次くんが達哉くんの肩を叩いて笑っている。
まったく解せぬ。
中に入ってからは、最初のアトラクションは集団行動になったが、それからは自由行動に。
何気にうちの高校って良い所の子も結構在籍していたりして、いまどき門限が夕方なんて子もいるので、日暮れまでには帰宅予定だったりする。
お昼は企画者男子の彼女が準備の良い子だったらしく、その子が予約したレストラン(なんか割引特典とかあるらしく、高校生のポケット事情にも優しい金額)に集合して、また午後からはいくつかのアトラクションを集団行動するらしい。
うん、その集団行動予定のアトラクションは自由行動で行くなって事だね。
その中に達哉くんとの出会いになったアトラクションがあったな。
まあ、変に人数少ないとその辺意識しそうだし、良かったのかな。
私は佳穂と一緒に行動する予定だったし、そうなると竜次くんと達哉くんも一緒に行動することになるだろうしね。
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午前中は結構バラけるのかなと思っていたのだが2グループに分かれるぐらいで、うちのグループにも他に2カップルが一緒で、おかげで女友達が増えました。
ちなみに2人とも同じ学校の違うクラスの子です。
ついでに、さっき気付いた人もいただろうけど、2人の内1人は兄妹の子です。
中一のときに親の再婚で兄妹になったそうで、最初は同い年って事もあってギクシャクしていたが、色々あって今では両親公認の恋人兄妹だとか。
なんですか、その少女マンガかドラマみたいな関係!
いやー、思わずテンション上がって男子そっちのけで盛り上がってしまった!
私だけね……
いや、だって私以外は既に知っていたらしいからね。
サッカー部では有名な話だったらしい。
まあ、ここではっちゃけたお陰で、この2人とも仲良くなれた感じではあるんだが。
「晴海ちゃんって、思ったより明るくって面白い人なんだね」
「あっそれ私も思った。落ち着いた大人ぽい冷めた感じの人だと思っていたけど、突っ込みキャラだし」
あ、はい。良く言われます。
「うん。晴と友達になった人はたいていそう言うよ」
佳穂はその辺り良く分かっているよね。付き合い長いし。
他人見知りであまり自分から他人に話しかけたり出来ないので、外見と併せてツンケンしたイメージを持たれることが多いんです。
慣れて仲良くなると、突っ込みしまくっていますけど。
その証拠に、一緒に回っている女子2名と彼氏の男子2名も最初は驚いていたからね。
達哉くんは、竜次くんと佳穂を交えて既に私とも友達付き合いしているから、その辺りは知っているけど。
「まあ、私って見た目がこんなんだから、確かによく言われるけどね」
中身は、少女マンガが趣味のライトオタです。外見とのギャップが酷いので、ドン引きされる事も。
運命の人とか普通に信じていますが何か?
「どっちかというと、私の方が性格きついかもね。しかも、運命の人とか信じて白馬の王子を待っているいる乙女で少女マンガ大好き女子高生だから」
オイコラ!なぜいきなり暴露する!
「ちょっ!佳穂!?」
あわてる私を無視して佳穂が更なる爆弾を投げやがった。
「放課後の教室の窓から、思い人を眺めてアンニョイ雰囲気醸し出したりしているし」
「うわー、なにその乙女」
「うん、それは流石に想像の斜め上だったね」
当事者の私を無視して、盛り上がる女子3人だった。
まあ、恋愛話は女子の親睦を深める会話では良いネタなんだけどね。
当事者が私じゃなければ……
あれ、達哉くんが驚いた顔しているんだけど?
私の性格把握していたはずだよね?
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ランチタイムになりました。
何故か席が午前中に一緒に回った女子と男子に分かれましたが、良いんでしょうか?
「女子組と男子組に分かれちゃったけど、カップルの人はこの席分けでよいの?」
一応、一緒の女子組になった佳穂ほか2名に聞いてみた。
「うん。せっかく仲良くなれたんだから、これで良いんじゃない。彼とは戻ってからも一緒だし」
なるほど、夕方には地元に戻る予定だし、カップルはその後があるんですね!
「そうよね。晴海ちゃんは誰かと一緒に座りたかったのー?」
なんで、そこでからかう様に私に返すんですかね?
このメンバーだと一緒に座ってくれるのは達哉くんだから願ったりだけど、そんな理由じゃないからね?本当だよ?
「私は友達増えて嬉しいんだけど、なんか独り者の私に気を使われたなら悪いかなって思って」
別に独り者の僻ひがみじゃないから。本当に私の為に気を使ってくれているのなら悪いと思ったし。
「……晴海ちゃん、じつは天然?もしくは鈍感キャラ?」
あれ?
「えっ?私なにか間違った?」
隣で佳穂がため息ついていますが、本当になんなの?
「この子、思い込みが激しいくて、一度思い込むとそこから観察力や想像力が欠如するんだ」
「なるほど、周りから見たらバレバレなのに、本人はまったく気付かないとか、気付いているのにありえないとか思い込んだりする人か。趣味だけでは無く、本人までヒロイン気質とか……」
「見ている分には面白いけど、当事者や関係者になると、微妙に面倒な人だね」
オイコラ、確かに半日でかなり仲良くなったとは思うが、大概失礼な発言だな。
まったく否定できない事は自覚しているけどね……
そして、向こうで達哉くんを除いた男子組が爆笑していますが、本当になんなんだ?
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新しい友人達との楽しい(一方的に私が弄くられていたとも言う)ランチも終わって、午後の部です。
そして、楽しい時間というのは本当にあっという間に過ぎ去るもので、早くも本日最後のアトラクションになりました。
偶然ですけど、達也くんと初めて出会った件のアトラクションが最後になりました。
これに運命を感じる私は夢を見すぎなんでしょうか?
もっと現実を見ろと言われると、目の前の現実は長蛇の列なものでテンション駄々下がりなんです。
ちなみに私の隣は佳穂ですが、あの時と違って達哉くんは私の目の前に並んでいたりするので、これで前回と同じく私が落ちそうになると……
うん、今度は支えて貰えないからそのまま落ちるね。
ここであの時のシーンの再現とか起こったら、運命信じて告白とか勢いで出来たかもしれないけどね!
というか、後ろは小学生ぐらいの子供だし、巻き込んだら危険極まりないな。
しかし、達哉くんはあの時の事を覚えているんだろうか?
あの時の事は覚えていても、私だって事に気付いていない可能性もあるしな。
そもそも、あの時に一緒にいた子ってきっと彼女だろうし……
既に友達になって早4ヶ月。
いまだに何故にその事が確認出来ていないって突っ込んだあなた!
最初の会話は、竜次くんの友人として紹介されて、そのまま竜次くん&佳穂のネタとサッカー部の話ばかりだったんだよね。
そもそも、他人見知り&引っ込み思案な私から話し掛けたり出来なかったし。
更に、最初に聞かなかったからタイミング逸したのと、あの時の子が彼女だって言われたらと思うと怖くなってそれからも聞けなかったんだよ!!
……ヘタレだって事は自分が一番良く判っているので、言わないで貰えるとありがたい。
多分、佳穂なら直接ではなくても確認しているんだろうけどね。
そして、既にその辺りの事を知っていても、佳穂は私にワザと触れないだろうからな。
気を使ったにしても面白がったにしても。
ちょっとアンニョイ気分になりながらひたすら列にならんでいました。
徐々に、階段のあの時の場所に近づいて来ます。
無意味にドキドキする私の心臓は何なんでしょうか?
あの時の情景やら気持ちやらが色々リフレインしている所為ですね。
はい、分かっています。
そんな状態に陥った私は、ひたすら目の前の達哉くんの背中を見つめている。
達哉くんがこの場所での事を覚えていて、私の事を考えていてくれたら嬉しいなとか思って。
……うん、やっぱりこのままは嫌だな。
キチンと想いは伝えたいな。
上手く行くかは分からないけど。
あの時の娘が彼女だろうから、上手く行かない可能性の方が高いんだけどね。
「達哉くん、えっとあのね」
意を決して、目の前にいる達也くんに声を掛けた。
「達哉くんは覚えていないかもしれなけど、実は私達ここで前にね……」
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さて、結果だけお伝えします。
ぶっちゃけ恥ずかしいので告白シーンは割愛させて頂きますが、衆人環視の中でやらかした感じです。
何があったのか気になる人は、達哉くんか佳穂にでも聞いてくれ。
私から話したくはないので、あしからず。
今回の告白でわかった事はいくつか。
前に達哉くんと一緒にいた女の子は達哉くんの妹さんでした!
そう、達哉くんはフリーだったのです。
更に驚愕の事実が。
なんと達哉くんは私の事を覚えていて、尚且つ私に対して好意を持っていてくれたそうです。
えっ?そんなの皆わかっていた?
佳穂や竜次くん、はたまたこの日に初めて友人になった女性陣にも言われたんだが。
解せぬ。
いや、私の想いは、もの凄く判りやすかったと思うけどさ。
とにかく、私達は無事に付き合うことになりました。
多分続く……(嘘)