第七十四話「伝説」
「もういた」
「あ、来た来た。入れないよー」
パスワードとか教えてないしね。
私達より早く来るとは思わなかった。
門のセキュリティを解除し、ミーセを中に入れる。
「はいっ。ダッシュスクーターはそっちの駐輪場に停めといて」
ん?
ミーセは昨日日本に到着したはずだ。
「このダッシュスクーターは誰の?」
「誰のって、ボクのだよ。昨日買っておいたんだー」
「結構高かったんじゃ、、、」
歩きながら恐る恐る聞いてみる。
「大した支出じゃないよ。お金ならいっぱいあるし」
「「悪気の無い富裕宣言!」」
ミーセは日本にもファンが大量にいるくらいの人気がある。
天才美少女としてテレビに出る事も多い。
「テレビの仕事とかでお金持ちになったの?」
大好きなお金の事は聞いておきたい。
「それもあるよ。まぁ、向こうでの仕事はほとんど辞めちゃったけど」
「そうなんだ」
「何やってたの?」
「朝の情報番組のコメンテーターとか雑誌のモデルとか」
完全に芸能人ね、、、。
確かこんな伝説があったっけ。
ミーセが入学した学校の入試倍率が二十倍を超えた。
余命宣告を受けた子供の重病がテレビに映ったミーセを見て完治した。
ミーセのファンがミーセに話しかけられただけで気絶してしまった。
もはや聖女よ聖女。
「おー早かったなー。玄関の開け方教えるからこっち来てくれー」
「はう」
「「ミーセが気絶するのかよ!」」
倒れかかったミーセをキャッチしてガクンガクン揺らすと戻って来た。
「声もかっこいい、、、」
「「そうですか」」
「は、はじめまして。ミーセ・ラブゼアンって言います!」
「おう、よろしくミーセ。俺は能登時晴。この研究所の研究員だ。それで、ロックの外し方なんだが」
美少女を前に時晴の態度は変わらない。
毎日のように美少女を見てるからかな!
正面玄関のロックの開け方をレクチャーされるミーセ。
上野達にセキュリティを破られてから七重のロックになったため、開けるのにいちいち時間がかかる。
「うん覚えたよ」
「記憶力が良くて助かる。じゃあ断片の話に移るぞ。今回のは怒る断片。信号の強さは普通って感じだな。場所からして会社員だと思う」
断片は信号の強さによって説得しやすさが変わる。
怒る断片。
大変そうだ。
「それと、比田井が持ってた腕輪を調べてみたんだが、なかなかすごかったぞ。配線とか式陣とか、中の物全部自己流だ。基本は押さえてあるから作動はするけどな」
「比田井が作ったのかな?」
「でも一つの幻術しか使ってなかったから違うんじゃない?」
確かに。
となると、イズや解理のような最深部の者か。
イズや解理が何者か、性別すら分からないが、アポトーシスの中心にいる事は間違いないだろう。
「ま、それは後で良いや。とりあえず今は断片回収だな」
「後でいっぱい時晴の話を聞きたいな。ボク、これからここに住むんだしね」
時晴の話、と言うより時晴の近くにいる事が目的なのだろう。
聖女にここまで好意を寄せられる時晴がファンに暗殺されない事を祈る。




