第七十三話「恥ずかしい」
「もう離さないから」
抱きしめられ、人の温度を感じる。
「お前達の笑顔を見るためなら頑張れる。何度挫けそうになってもお前達を思い出せば力が湧いてくる」
とても優しい、暖かい声。
私達も、離したくないと思う。
「好きだ。愛してる。ずっとそばにいて欲しい」
その言葉を噛み締め、飲み込む。
「だから」
「「のわっ!?」」
朝、飛び起きるとそこはいつものベッド。
ま、さ、か。
布団を被り、頭を抱える。
とんでもなく恥ずかしい夢を見た。
私達はああいった状況を望んでいたのか。
あー恥ずかしい!
「なぁ、調子でも悪いのか?」
「何でもない何でもないっ!」
「黙って食べなさい!」
「、、、機嫌悪いみたいだな」
「そっとしておこ」
もはや思い出したくも無い。
思い出したくもない事を思い出しただけで恥ずかしさが蘇る。
「もう大丈夫なの?」
時晴は昨日退院した。
こんな朝っぱらから電話をかけてくるくらいには回復したらしい。
「あんまり動いてなかったから何か調子は良くねぇけどな」
時晴は淡々と告げる。
「で、今日、断片回収行くけど来るか?」
「「もう出たの!?」」
昨日回収し終わったばかりなのに。
「別に同時に出ないわけじゃないんだけどな。むしろ回収してない断片は全て同時に存在するんだけど、信号が強くないからレーダーに引っかからなかったりするだけだ。今までも同時に出てたんだが、近い所から順番に回収してたんだよ」
つまり、分かっていながら切り捨てた。
この代で助ける事は出来ないと。
責めたりはしない。
現状では一番正しい判断だ。
ただ、悔しい。
「行くよ」
「疲れもそれなりに取れたしね」
時晴と言えば。
「ところで、ミーセには会った?」
「話には聞いたけど、会ってねぇな。研究所に住むつもりらしいけどまだ部屋が片付いてねぇからホテルに泊まったってさ。そうだミーセにも断片回収手伝ってもらうか」
きっと喜ぶだろう。
私達は邪魔も手助けもしないつもりだ。
恋する乙女は面倒らしいからね。
「じゃあ研究所に集合な。ミーセにはそっちから言っておいてくれ。研究所の場所とか断片回収の仕方とか」
回収の仕方は分かると思うが、まぁ一応確認しよう。
「分かった。また後でね」
今度はミーセに連絡。
スマホの向こうから綺麗な声が。
「はい?」
「あ、ミーセ?私達と時晴で断片回収行くけど、来る?」
「うん!絶対行く!時晴に昨日会えなかったからとっても楽しみ!」
デートじゃねぇぞ。
「、、、研究所の場所のデータを送るからそこに集合ね」
「うんありがとう!早く準備しなきゃ!」
プツンと通話が終わる。
ミーセも恥ずかしい夢を見て悶えれば良いのに。




