第六十七話「だが」
勝負は反則負けで良い。
だが、断片の奪い合いには勝った。
最初から真っ向勝負をするつもりなんて無かった。
だが、勝ちは勝ちだ。
役割分担なんて無かった。
だが、騙すためには宣言する必要があった。
ずっと加工施設の屋根の上に潜んでいた。
だが、最大のチャンスのために最後まで飛び出さなかった。
「ひっどーい。本気出すとか何とか言ってたのにー」
「ふっふっふ、双子界随一の外道、田島姉妹をなめないでよ」
「ちゃんと戦略として騙したから許されるもんね」
「、、、ひっどーい。大体、戦略なんてあったの?少なくともボクは知らないけど」
まぁ、そこまで深く練った戦略じゃないけど。
「こいつの能力は視界泥棒。相手の視界を使う能力。目線の動きから相手の行動を読んだりも出来る。けど」
「視界以外の情報は泥棒出来ない。例えば心の中で考えている事とか」
「そっか!精神が繋がってる二人なら視線を全く動かさずに互いの動きが分かるもんね!」
だが、危ない賭けでもあった。
例えば、同時に複数の視界を使える場合。
念の為、別行動した方をしばらく追跡しようと思った場合。
だから別行動してしばらくは本当に遠くに行く。
複数の視界を使えないと分かったので引き返して潜伏した。
一人の視界しか使えないのなら、私かミーセの視界を使わなければ危ないという状況にすれば良い。
視界泥棒の能力が予想と全然違っていれば成り立たなかった戦略で、危ない賭けだった。
「で、この人はどうするの?」
「意識を取り戻す前に拘束する」
「コードイマジンってロシアでも使える?」
ミーセは軽く頷く。
「シャナノフは通報する時にコードイマジンって言えって言ってたよ」
「じゃあミーセは通報しておいて」
「インビジブルポケット」
こういう時のために頑丈な拘束バンドを取り寄せられるようにしておいた。
腕を後ろで組ませ、拘束バンドを付ける。
自力では絶対に外せないようになっている。
そして、治癒の式ね。
ぶん殴った所は治しておく。
ミーセのナイフが刺さった所には傷一つ無い。
「五分で回収に来るってー。早いねー」
「引き渡した後は断片の方に行かないと」
「裏の世界の住人とやらは皆が片付けちゃったかもね」
裏の世界の住人、八十人。
幻想科学の研究者四人。
一人当たり二十人くらいか。
幻術とか幻覚とかが向こうに無い限り負けないだろう。
「コードイマジンの者です」
黒っぽい服を着た男や女。
黒い輸送用の車両。
ほとんど会話もせずに比田井を回収して帰ってしまった。
「あの人達って、普通に給料とか貰ってちゃんとした生活してるのかな?」
「もしかしたら普段はただの公務員だったり?」
「ボクは、失業者が機密情報隠蔽機関に拾われた説を提唱したい」




