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第八話「演出」

「おかえりー」


家に帰り、自分の部屋のドアを開ける当然の行為だ。

ただ、俺の部屋にカズサがいるのは当然ではない。


「おかえりー。じゃねぇよ!勝手に部屋に入んなって言っただろ!」


カズサは俺と大して歳も変わらないように見えるが、学校的なのは無いのか?

テロでそれどころじゃないのかもしれないが。

つまり、カズサは日中暇なのだ。

俺の部屋を隅から隅まで探して遊ぶかもしれない。

鍵を隠しておいたのに何故いるのだろうか。

名探偵か。


「そうだっけ?まぁ、いーじゃん別に。もしかして見られたくないモノとかあるの?」


「ば、バカ言うんじゃねぇよ!そ、そんなもんあるわけねぇだろ、、、」


慌てて否定してしまう。

カズサの術中にはまってしまった。


「おやおや?その慌てようはあるってことを自分から言ってるようなものですねー」


からかうように顔を覗き込んでくる。


「あーもう、いい!ったく、どいつもこいつも人の話を、、、って思い出した!里奈が部屋に来ちまうんだった!おいカズサ!また隠れててくれ!」


こんな事してる場合じゃない。

めんどくさい事になって里奈に軽蔑されるのは避けたい。


「里奈って幼なじみの子じゃないの!?分かった分かった!隠れてちゃんと見とくね!」


「おいやめ」


ろ、を言う前にドアが開く音。

鍵すらかけてなかった。

というか、人の家に勝手に入ろうとするのはどうかと思う。


「おじゃましまーす!」


やっぱり里奈だ。

家が近いせいでカズサを隠せなかった。


「じゃ!頑張ってねー!」


昨日と同じ場所にシュタタッと隠れるカズサ。

全部そこで聞くつもりか、、、。


「翔也ー。遊びに来てあげたよー!」


部屋のドアを開けるガチャリという音で意識を切り替える。

焦りを出してはいけない。

いつも通りに振る舞え。


「だから来なくていいって言っただろ、、、」


「もー嬉しいくせにー」


強めに背中を叩かれる。

今叩く必要あったか?


「いってぇな!、、、とりあえず、茶でも入れてくっから待ってろ」


この場から離れるのはヒヤヒヤするが、いつも通りを演出しなければ。




「 、、、ってわけなんだよー」


しばらく俺の失敗談やらなんやらを話したりして楽しい時間を過ごす。

カズサがいる事を忘れかけた。


「もうードジなんだからー。ん、もうこんな時間。じゃ、私そろそろ帰るね」


時計は十八時三分を示している。


「おう」


短く返事して玄関まで送る。

里奈は靴を履き終えるとドアノブに手をかけながら言う。


「じゃあねー」


「あ!ちょっと待て里奈!」


つい呼び止めてしまった。

やめとくか、、、いや、やめない方がいい。


「ん?何?」


里奈が不思議そうにこちらを向く。

あまり深刻なムードを出さず尋ねる。


「いや、急なんだけどさ、どうしても覚悟を決めないといけない時、どうしたらいいと思う?」


「急ねー。んー、譲れないものがあるから絶対に退けない!って思えばいいんじゃない?、、、翔也、何かすごい挑戦でもするの?」


すごい挑戦か、、、。


「まぁ、そんなところだな。悪いな引き止めて」


「ううん。じゃあね翔也ー」


今度こそドアを開けて出ていく。


「ああ、じゃあな!」


去っていく里奈の残像を目に焼き付け、少しだけたたずんでいた。

部屋に戻るとクローゼットの扉が開いている。


「あー!ずっと隠れてて全身が地獄のように痛いー!ねぇ、そう言えば玄関で何話してたの?」


「ん、あぁ。大した事じゃねぇよ」


本当に、大した事じゃない。

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