第六十四話「礼」
ミーセが眼を閉じると少しだけ比田井の動きが鈍った。
私の読みは大体当たっていた事になる。
じゃ、予定通り実行って事ね。
うん。
「ねーいつまでー?」
「あ、もう開けていいよ」
ミーセの投擲が再開される。
拳に当たるギリギリの所を通ったり、フェイクのナイフを織り交ぜたりして比田井の動きを制限していく。
やはり、島の血族の頭脳と動作補助は侮れない。
「視線が俺から離れていたぞ。気を抜ける程有利ではないだろう?そういう所が甘いって分からないのか?」
まず。
「ふっ!」
吹き飛ばされる。
何メートルも。
さっきと違い、行き先は加工施設か何かの壁だ。
この速度で衝突すれば戦闘不能。
「インビジブルポケットォォォォォォッ!」
咄嗟に背中側に大きな穴を生み出し、海の上に繋げる。
「あぶぅ!?がはっ!ぷはっ!はぁ、た、助かった、、、」
海水は夏ではあるが、やや寒い。
大丈夫?
、、、しょっぱいだけ。
「はぁ、はぁ、ミーセ。しばらく耐えて、、、」
強化の式を使ったので身体が痛む。
インビジブルポケットを使ったり、式陣と強化の式の同時に使用したりと電力もかなり消費してしまった。
とりあえず、海から上がらないと。
「う?」
陸に上がると、そこに見えたのは。
漁師五人。
銃らしき物を持った男三人。
「何言ってるか分かんない、、、」
翻訳機は持っていない。
ミーセもシャナノフさんも日本語を話せたからだ。
だが、漁師を銃で脅しているのは分かる。
「インビジブルポケット」
銃を持つ男の一人に海水を浴びせる。
何か叫んだが、私の存在を知らないので状況を理解出来ない。
強化の式、百六十パーセント。
「せやっ!ほっ!たぁっ!」
三人に急接近し、鳩尾に拳を叩き込む。
礼は要らないぜ。
言われても分からないしね。
早く戻ろう。
他にもこんな事になっている場合は海乃さん達に任せるしかない。
とにかく今は元凶を取り除くのを優先する。
リストバンドは大丈夫だったが、、、スマホは海水で壊れていないだろうか?




