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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
on truth

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第六十三話「クリーンヒット」

何度拳を振るっても、悔しいが当たる気配は無い。

奇襲なら殴れるかもしれないが、奇襲するだけの余裕は無い。

こちらも避けなければ吹っ飛ばされるからだ。


「はぁ、誰か来てくれい」


そもそも、比田井分吾の幻覚もよく分からない。

視界泥棒と言っていたが、視界を泥棒してどうなる?

単純に考えれば、相手の眼を見えなくするとか、相手の視点で見たりとか?

だが、私達の眼は四つとも正常だ、たぶん。

では、後者か。

もしそうなら私達の攻撃を見切る事も可能かもしれない。

二人同時に泥棒されていたら連携も意味が無くなるのでその場合は面倒だが。


「「やっ!?」」


空を切って地面に刺さったのは電気で出来たナイフだ。

比田井が避けたので私の足ギリギリの所に刺さっていたナイフが消える。


「今のも避けちゃうんだー。やるねー」


「ミーセ!」


「来たよーっ!」


塀の上から飛び降りる。

続けてナイフを二連投。


「幻術か。勝負に水を差すな」


風でナイフの軌道を変え、バックステップで距離を取る。


「来てくれて嬉しいけど、向こうは大丈夫なの?」


「シャナノフも加勢するから大丈夫だよ。断片も一緒に連れて行くって」


「下手にバラバラになるよりも皆で守った方が良いって事ね」


ここまでは比田井にも聞こえるように大きな声で話した。

次はミーセに聞こえるギリギリの小声で話す。

口元は拳を構えて隠す。


「私は別行動するね」


一気に後ろを向いて走り出す。


「これで人数は同じでしょ?」


「役割分担って大切よね」


「、、、まぁ、良いだろう。そのナイフじゃ俺の風との相性は悪いだろうしな」


試してみるしかない。

もし比田井の幻覚が、相手の視界で物を見る、だとしたら利用出来るかもしれない。


「ボクがナイフを投げて相手の動きを制限するから接近して攻撃して」


「私に刺すなよ」


ミーセは何とも言えない笑みを浮かべて、ナイフを生み出す。


「否定しろよォォォォッ!」


強化の式、百五十パーセントで一気に近づく。

拳にはナックルエレキ。

つまり、二つの幻術を同時に発動しているのだ。

拡張バッテリーには紙を貼り付けてある。

式陣をプリントしておいた。


「速いな。だが、対応出来ない速度ではない」


ミーセが駆け回りながらナイフを投げている。

不思議な事に、私がどう動いてもナイフは私には当たらない。

避けられているので比田井にも当たっていないが。


「まだまだっ!」


「もっと速くしてやるよ!」


強化の式、二百パーセント!

右の拳で突き、左足で蹴り上げ、その勢いを利用してジャンプし、空中で回し蹴り。

最後の回し蹴りは避けたのではなく、受けた。

つまり、回避が間に合わない程の速度だったという事だ。

ただ、クリーンヒットが必要だ。

強化の式は身体にかかる負荷も大きい。


「くっ、確かに、少々不利だな」


比田井はナイフを避けながら吐き捨てるように言う。


「ナイフ女で見た方が良いか」


考えろ。

見る、とは視界泥棒の力で見る事か。

ナイフ女はミーセ。

の方が良い、つまり選択。

元は私で見ていたのか。

やはり相手の視界で物を見る能力か。

そして同時に複数の相手の視界を使えない。

、、、分かってきた。

自分の失言で敗北しやがれ犯罪者。


「俺の幻覚が分かったのか?分かった所で対策など出来ないだろうがな」


風を吹き出してナイフの軌道をずらす。

攻撃の避け方が変わった。

今までは一つ一つの攻撃を細かく避けていたが、今度は身体を大きく動かし、少ない動きで多くの攻撃を回避している。


「ミーセ!眼を閉じて!」


「う、うん」


やはり、比田井の動きが一瞬止まった。

これなら、勝てる。

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