第五十九話「身体」
寒い事で有名なロシアだが、夏はそれなりに気温が上がる。
朝早いので若干肌寒いが、冬の寒さを知っていればもはやサウナのように暖かく感じるだろう。
それは言い過ぎかな?
「それにしても、、、速かったねぇあれ」
「あー最新式だからね。リニアの中でも最高速なんだって」
ロシア中南部から東部まで約一時間半。
身体にかかる負荷を制御する装置があるおかげで身体が潰れたりはしない。
立つ事は許されないが、座ってシートベルトさえしていれば快適ではあった。
トイレに行きたい時はシートごと移動して連れて行かれる仕組みなので海乃さんが面白がっていた。
「このあたりに漁師はたくさんいますが、出港する場所はほぼ同じなので、しばらく見張りましょう」
とは言っても、七人固まっていても怪しいし非効率的なので二手に分かれた。
仕事の邪魔をしないように隅に隠れる。
私達二人とシャナノフさんでしばらく張り込んでいるが、なかなか怪しい人物は見つからない。
「あのぅ、、、」
後ろから声をかけられる。
シャナノフさんではない。
身体はそれなりに大きいが、頼りない感じの男の人だ。
「はい?」
「あ、あの、何をしておられるのですか?」
翻訳機を通じて弱々しい声が。
「あ、えっと」
「お気になさらず」
「そうは言っても、、、あの、危ないですし、、、ほ、ほら重機とかあったり」
まぁ、ここは素直に従っておくか。
「申し訳ありません。お邪魔するつもりは無かったのですが」
「い、いえ。ここで誰かが怪我をしたらと思うと恐ろしくて恐ろしくて」
そこまで心配しなくても、、、。
怪我は無い方が良いのは同感だけどね。
「、、、失礼ですが、随分心配性なのですね」
シャナノフさん?
「え、あの、自分ではそういう実感は無いんですが、最近よく言われるんです」
「最近っていつなんですか!」
「一昨日くらいですか!」
ちょっと強かったかな?
でも、そうなってしまう。
シャナノフさんはきっとこう考えている。
恐れる断片だと。
「は、初めて言われたのは三日前ですよ。それから何回か」
決まりだよ。
決まりだね。
サクッと見つかって良かった。
早く枠円で回収しよう。
そして今日も同じ事を繰り返す。
「おいおい待てよ。そいつは俺のターゲットだ」




