第五十六話「日本式」
「どう広いでしょー?」
客人用の部屋にはベッドが三つとバスルームやトイレ、さらにキッチンまで付いている。
「はいはい広い広い」
「ボクが流される側!?」
三人でも全然窮屈じゃない広さだよ。
広いロシアでは部屋も広いのが当然なのかな。
「「そりゃっ」」
ベッドの上にカバンを放る。
「流石にご飯は出ないよね?」
「ふっふっふー。よくぞ聞いてくれましたっ!今日はボクがご飯をご馳走するんだよー!」
料理はテキトーに出来ないぜ。
甘く見るなよ小娘。
あ、私達の方が年下か。
「それにしてもどんな料理だろうねぇ。やっぱりー、ロシアの郷土料理とかぁ?」
研究所のくせに食堂まで付いている。
ミーセが食堂のテーブルに並べていったのは。
「はいっ!カレーライスお待ち!」
「カレーライスかよ!?」
「別に悪くはないけど!」
しかも、本場のルーとライスが別になっているスパイシーな方ではなく、日本式の辛すぎない方だ。
「ボクは半分日本人だから日本の家庭料理もマスター済みなのでしたー」
でしたー、じゃねぇよ何で私達のアイデンティティをどんどん奪っていくんだよおい。
「それじゃいただきまーす!」
もう海乃さんが食べ始めちゃった。
私達も。
「「美味しい、、、」」
鶏肉が口の中でほろほろと溶けていくように無くなるが、食べ応えはある、不思議だ。
ルーも、辛さと甘さのバランスが良く、一口食べるともう一口食べたくなる。
「ミーセは昨日一日、カレーライス作りの練習をずっとしていましたからね」
「あ、ばらさないでよ!」
裏でちゃんと努力するタイプなのね、、、。
アイデンティティとか言っていた私達の心が狭い事は再確認出来ました。
「サラダとスープもあるからねー」
一緒に持って来たのは、、、お箸ね。
「お箸があるの?」
「イエース!ジャパンのチョップスティックがベリベリ大好きネーっ!」
「英語圏じゃないでしょ」
、、、ミーセは良い人だ。
しかも文武両道で美貌もユーモアも持ち合わせた完璧人間。
世の中、勝てない相手はいる。
しかし、得意ジャンルが違うだけの場合がある。
つまり私達にも勝てる分野がある。
思いつかないけど!




