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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
on truth

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第四十九話「くすぐったい」

「元気ー時晴ー?」


「来てあげたよー」


時晴は入院している。

昨日、若草利得という幻視者にボコボコにされたからだ。

結果として勝利したが、時晴は入院までしなくてはならない程の怪我をしてしまった。

本来なら幻視者であり、戦闘能力が高い私達が受けるはずだったダメージだ。


「お、来てくれたのか。先輩達は電話だけだったからてっきりお前らも来ないかと」


「薄情だねあの人達は」


「電話しただけマシだよ」


個室なので話し放題だが、流石に大声は出さない。


「私達は、、、日頃お世話になってるからね」


「こういう時にはちゃんとお世話し返さないと」


「お前ら、、、」


時晴はこちらをゆっくり見つめている。


「ありがとなー!ほんっと良い子だお前ら!」


時晴に勢い良く抱き寄せられる。

頭をくしゃくしゃと撫でられる。

右手に巻かれた包帯が顔に当たってくすぐったい。

子供扱いされているような気もするが、別に悪い気はしない。


「そ、そうだリンゴむいてあげようか」


話題を変えて少し離れる。


「私達の新技を見せてあげる」


「新技?」


そう、新技。


「ナックルエレキ」


式をやや攻撃寄りにする。

私がリンゴを持って。

私が右手を構える。


「ま、まさか!?」


「「もはや幻術でリンゴの皮むきが出来るのだ!」」


右手の拳に貼られた電気のバリアの端を使う。

そもそも、ナックルエレキは手、と言うより殴る時に当たる面だけに電気のバリアを展開する幻術だ。

リンゴをゆっくり慎重に回転させ、皮をむき、果肉は出来るだけ削らないようなする。


「おおーっ!」


「はいっ!」


「どうぞ!」


「いや丸ごと!?」


おっと、切るのを忘れていた。

ナックルエレキを使って器用に切り分ける。

まな板兼お皿に並べ、ピクニック用みたいな可愛らしい爪楊枝をリンゴに刺す。

皮はゴミ箱へ。


「右手の指が動かないので食べさせて下さい」


「年下に甘えるな」


時晴が天下のなめられ体質だから忘れがちだが、能登時晴は二十三歳で、田島姉妹は十六歳なのだ。


「左手は動くんでしょ?」


左手はミウ・トートを操作していた。


「今左手は忙し、、、暇だな」


拳を怪我人に向けそうになってしまった。

時晴は不器用な左手で爪楊枝を持って食べ始める。


「ところで、睦規さんから楽しむ断片の解析データが来たんだけど、今までで一番歪みが大きかったらしいぞ。断片を継承してすぐだったからあんなもんで済んだけど、もっと時間が経ってたら暴走が止められなかったかもな」


やはり、断片の歪みの大きさは消えた存在の性格と関係があるのだろうか。


「そう言えば、時晴が使ってたあの幻術って何の効果があったの?」


若草と戦っている間拳が燃えていた。

しかし、最後の一撃で若草に触れたはずなのに燃えなかった。


「あーあれか。ブレイズフィストは燃やしたい物だけ燃やせる幻術だ。海乃さんの自信作。あの時は別に燃やしたいとは思ってなかったし、まぁ、ただの威嚇だな。火傷でもさせて生死をさまよわせるような事があっても良くないしな」


一撃で若草の意識を奪えたのはこういう精神的な効果も関係していたのかもしれない。


「そう言えば、救急車呼んでくれても良かったんじゃないか?」


「「確かに」」


大変な思いをしてまで近くの病院に時晴を運んだが、良く考えれば救急車を呼べばすぐに楽に着いたのに。

私達のバカ。


「確かに、って今気付いたのかよ!?、、、あと、次の断片はまだ発生してないみたいだ。それか、発生して間も無いから信号が弱すぎんのか。次の回収に俺が間に合わなければ先輩達に一緒に行ってもらう事になると思う」


「分かった」




「私達は帰るね」


「明日以降も来て欲しい?」


「いや、負担になるならいいや。そんなに重い怪我じゃないしな」


「そ」


「じゃあ私達はしばらく休む事にするよ」


病室を去る。

早く良くなると良いね。

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