第六話「拝む」
情報処理室のパソコンに向かいながら俺は唸っていた。
「えーっと、、、」
「どう?少しは進んだ?」
里奈か。なんやかんや俺を手伝ってくれるのか?
「いやー、全然進んでねぇ。まず何から調べ始めるかも決めてねぇしなー」
「三十分もやっててまだ白紙なの!?もうー、私も手伝ってあげるから」
もう三十分も経っていたとは、、、。こういう時の集中力はすごい。
進んではいないが。
ここは里奈の好意にしっかり甘えよう。
手を合わせて里奈様を拝む。
「助かる!正直俺だけじゃ来世までかかる!」
「来世?まったく、ふざけてないで、早く終わらせるよ!」
思わず口から出てしまった、来世という言葉も流される。
里奈はキャスター付きの椅子に座る。
当然俺のすぐ隣だ。
自然と、右利きの俺の邪魔にならないよう左に座るあたりがキュンキュンポイントだ。
色々思いながらも、しばらく作業を続けた。
「ふぅー!やっとおわったぁぁぁぁ!」
身体を目一杯伸ばし、天というより天井を仰ぐ。
「普通十五分もかからないのに、まさか二時間もかかるなんてね、、、」
「ったく、誰のせいだよ!」
「翔也のせいでしょ!」
一連の流れが綺麗に決まった。
こういう小さいボケにも反応してくれるのもキュンキュンポイントだ。
「はっはっはー!先生のとこに出しに行ってくる!」
意気揚々と情報処理室を出る。
ドアは閉め忘れた。
「ほんとに手間がかかるんだから、、、」
里奈が施錠してくれたとレポート提出後に聞き、感謝の気持ちを込め、もう一度拝む。
カズサより拝み甲斐がある。