第三十七話「八階」
「どうしたの時晴?」
「早く移動してよ」
「持ち上げるのでっ精一杯ですっ」
さっきまで普通に話してたでしょ。
でも、実際合わせて八十キログラムくらいを抱えている事になる。
わざわざ無理して持ち上げなくても良いのに。
格好つけやがって。
「まだそんなに遠くには行ってないみたいだねでも信号は強くなってるよ」
ダッシュスクーターを一度停めてミウ・トートを操作している。
「思ったより暴走が早く進んでいるな」
「早く行かないと」
再び走り出す。
向かっているのはそこそこの高さのビルが並ぶ、街のそこそこ中心地だ。
こんな所まで逃げてどうするつもりなのだろう?
「いたよ!」
ビルの中に逃げていく断片。
「路上駐輪は出来ない!お前は断片を追ってくれ!」
「分かった早く来てね!」
海乃さんはヘルメットを脱ぎ捨ててビルに入っていく。
このビルには複数の企業が入っているらしく、案内表示にはロゴが並んでいる。
「ここに怪しい男が来なかった?背はこのくらいで髪は短くってあと、、、」
「その人ならエレベーターの方に行きましたよ。あなたもですけど、勝手に入って来られると困るんですが」
受付のお姉さんが言うとすぐに海乃さんは走り出してしまう。
「急いでるから説明は後でーっ!」
エレベーターのドアはちょうど閉まってしまった。
エレベーターは一つ、止まったのは八階。
ここで降りたとは限らないが八階にとりあえず行くしかない。
「あー早く来てよエレベーター!こうなったら!」
近くの階段に目を向ける。
まさか。
「三百パーセントォォォッ!」
九段とばしで階段を駆け上がっていく。
つまり二歩で踊り場まで、四歩で一階分だ。
「わざわざ八階まで逃げて何するつもりなんだろうねほんとぉ!」




