第三十三話「辺り」
「「さぁ出発!」」
宿を出てダッシュスクーターに乗る。
時晴はまだ身体が痛そうだ。
このレンタルのヘルメットは通信機が付いていない。
せめて移動中話せたら暇を潰せたのだが、仕方無いか。
私達はいつでも話せるけどね。
「こーのーあーたーりーなんだけどー、、、」
とりあえずダッシュスクーターを駐輪場に停め、レーダーが示す辺りを探してみた。
だが、いない。
「あっちの方は?ショッピングモールだよでも人がいっぱいいるから誰が断片か分かんないか」
「まぁ、おかしいやつがいたら、そいつが断片かもしれないですし行ってみましょう」
大型のショッピングモールに入ると、かなり人で賑わっている。
レーダーはこの辺りを示しているが、人が多すぎて誰が断片かは分からない。
露骨におかしい人がいればいいのだが、基本的に暴走しなければ特徴は表れない。
「おーい、迷子になんなよー手繋ぐかー?」
「「じゃそうしましょ」」
時晴の両手を握り潰す。
子供扱いするなとあれほど言っても分からないらしいよ。
愚かだね。
結局駐車場の辺りまで来てしまった。
「それらしい者はいなかったな」
「信号はあるんだけどなー」
「誰かお探しか?」
私達以外の声。
だが、見当たらない。
「正解はーっ!ここでしたーっ!」
「「わぁっ!?」」
駐車場の天井から男が落ちてくる。
フィリピン人と思われる四十代くらいの男。
翻訳機をオンにしていたので話している言葉も分かった。
「探してんのって俺様か?、、、もしかして当たり?」
頷いたら改めて尋ねられる。
「じゃあ俺様に驚かされた気分はどうだ?」
驚かしてきた。
きっと、この人だ。
「まぁ、良くないですよ。そんなに驚かせるのが好きなんですか?」
時晴の質問に。
「おう。この世は驚きでいっぱいだった。だがな、、、」
間をしっかり取る。
「もう大した事じゃ驚けなくなっちまったんだよーっ!」
ビクンッ!
思っていた以上に大きな声だったので肩を震わせてしまう。
断片の思う壷だ。
「おー今のも驚いてくれたか。で、続きだけどよ、驚きたいわけ俺様は。だから驚ける物を探してんだよ自分で」
「そういう訳なら手伝いますよ」
時晴が枠円を身体の後ろに隠しながら近寄る。
「そりゃありがたい。、、、ってのはうそーっ!人といたら驚きが薄れる!もっと過激で!驚くべき物が欲しいんだよぉーっ!」
断片がショッピングモール本館の方に走り出す。
「暴走が始まっているのか!?」
「信号はそんなに強くなかったから、元々の性格もあるんじゃない?」
「とにかく、追いかけましょう!」
人がごった返しているショッピングモール内で、過激で驚くべき事なんてされたら、みんなパニックになるよ!
そもそも、出会って五分も経ってないのに鬼ごっこってどういう事なの?




