第四話「ハードモード」
カズサにはとりあえず俺の部屋に上がってもらった。
「それにしても、意外と部屋片付いてるんだね」
「意外とって何だ、意外と、って。まぁ、別に特別キレイ好きって訳じゃないけどな。それに片付けは嫌いじゃないし」
色んな物が適切な場所にピッタリはまるのがなかなか楽しい。
逆に片付けられない奴って何が出来ないんだ?
「あ、幼なじみの子もこの部屋に来たことあるの?」
「そりゃ、幼なじみだからな。里奈の部屋には入った事ないけど」
カズサは俺の顔を覗き込むように言う。
「入りたいの?」
「ば、バカ言うんじゃねぇよ!幼なじみだとしてもだ、女子の部屋に入って、女の子だし部屋キレイだなぁ、とか考えたりする、なんて事はして良い訳ねぇだろ!」
「そこまで言ってないけど、、、」
おっと、つい妄想が出てしまった。
「と、とにかく本題に入りましょうカズサさん!」
目で話題の転換を必死に訴える。
「はいはい。えーっと、どうやって未然にテロを止めるかだけど、タイムマシンの不具合で前世と元の時代しか行けないのが問題よね」
タイムマシンの仕組みはイマイチ分からないが、そもそも、何でタイムマシンに前世や来世が関係しているのだろうか。
前世来世ってもっとオカルト寄りなイメージがあるのだが。
「つまり、周防頼我の過去に行って直接説得するのは無理って事だな」
まぁ、行ったところであんなテロを起こす人間を俺が説得出来る可能性はほぼないだろう。
「次に、今から何もせずに元の時代に帰ってもテロはもう起こっちゃってるってのも問題ね。元の時代も時間は進んでるから」
「やり直しは効かないって事か」
一度しかチャンスが無いというのは、なかなかにハードモードだな。
そう思っていると、カズサが声のトーンをやや低くする。
「一番の問題はね、未来を変えるっていうのがすっごく大変だってこと」
「と、言うと?」
「基本的に、ちょっとくらい過去が変わっても勝手に単なる誤差として認識されるからすぐ修正されちゃうの」
「認識って、誰にだ?」
未来とか過去に、認識、という言葉を使える存在があるのだろうか。
「タイムマシンが発明されて結構経ってるけど、未だに解明されてないの。一応、偉い人とかは、歴史の目、って呼んでるけどね」
歴史の目。
なんだか凄そうな響きだ。
「はーん。じゃあその、歴史の目、が見ても分かるくらい変えねぇといけないんだな」
「そ、だからそれが一番大変なの」
具体的にどう大変かはよく分からなかったが、簡単ではないらしい。
「ただいまー」
ガチャンというドアの音と共に声が聞こえた。
「あ!母さん帰ってきちまった!めんどくさい事になるからどっか隠れててくれ!」
カズサはクローゼットの中に素早く隠れる。
クローゼットの扉が閉まると同時に、部屋のドアが開く。
「翔也、明日から出張で一週間いないからー」
「オッケー」
母さん、、、秋野絵里はドアを閉める。
少ししてカズサはクローゼットを開けて出てきた。
「、、、ショウヤ、料理とか出来るの?」
「ん?ああ。一応な。なんでだ?」
「せっかくだからここにしばらく住むね」
「ええーっ!」
「翔也!何騒いでるのー!」
「す、すいませーん!」
つい大声を、、、。
カズサが、家に、、、。
大丈夫だろうか、、、。