第十九話「空振り」
時晴、私、私の順で三台並んでダッシュスクーターを唸らせる。
ヘルメットに付けた通信機で会話する。
「レーダーは断片から信号を感知してる。脳波の測定機を応用してるんだが、脳波が二重になってる所に断片があって、断片の侵食が進むと信号は強くなっていく。脳波の波長によってどの感情を増幅させるかも大体分かるんだ」
「つまり、今回のは安らぐ時と脳波が似てるって事?」
「そういう事。なかなか理解が速いな。才能あるぞお前ら」
うふふ、お世辞はよしてよ。
えへへ、私達の能力には努力も詰まってるんだからね。
「お、もうそろそろだな」
見えてきたのはただの住宅地。
特におかしい所は無いよ。
駐輪場にダッシュスクーターを停めて歩く。
「ここ?」
「安らぐ断片はこの辺りに住んでるらしい。レーダーはここを指してる事が多かったからな。あと、まだ信号は強くないからそこまで深刻化はしてないと思うが、十分気を付けろよ」
適当に辺りを見回していると。
「あ」
「どうしたの?」
突然歩みを止めた時晴。
「、、、あの人だ」
まるで悪い事をしたかのように交差点の陰に隠れる。
「あの人が安らぐ断片なんだよ」
時晴は小声で訴える。
その人は二十代前半くらいに見える女性だ。
こんな時間にトボトボ歩いているのには何か理由があるのか。
休憩時間とか。
就活とか。
でもここに住宅地だよ。
会社っぽいのは近くにはないし、自営業をしているようにも見えない。
まぁ、そこはいいか。
「ひとまず、声かけてみる?」
「、、、いや、まずは通り過ぎるフリをして枠円を押し付けてみる。断片に取り憑かれてるやつはまともに話が通じるとは限んねぇし、あまり刺激したくない」
ちょっとずるい気がするが仕方ない。
怪しまれないように後ろから近づいて。
よし!
今だ!
「おうっ!?」
急に女性がしゃがみこみ、盛大に空振り。
「あら?どうかされましたか?」
スニーカーの紐を結びながらその人女性は言う。
勢い余って千鳥足の時晴は答える。
「あ、、、えーっと、今、学校でのお悩み調査活動中でして。なんか悩みとか無いですか?」
「よ、良ければ、良ければで良いのでお悩みを教えてくれませんか?」
「調査以外には利用致しませんので」
やや困惑しているが、承知したという感じで。
「分かりました、、、私で良ければ」
良かった。
まだちゃんと会話出来るみたいだ。
問題は暴走しないかどうか。




