第八話「ミウ・トート」
今日は何をするのだろう。
昨日と同じようにダッシュスクーターを停め、ヘルメットを外し、ペタっとなった髪を整える。
入口の認証は出来るようにしてもらっていた。
「「おはようございます」」
「おはよぉーう。若者たち」
若者、と言うが、伊寄さんだってそこそこ若いはずだ。
「伊寄さんも若者じゃないですか」
「若くない若くない。ワタシらはもう二十七歳だからねぇ」
十一個差。
「ワタシら、って事は睦規さんと海乃さんも同い年なんですか?」
「そうだよぉ。ミウ・トートだってワタシらの作品よ」
ミウ・トート。
小型かつ高性能のスーパーコンピュータね。
一般人はまず目にする事は無いが。
「あれ作ったのって幻想科学研究所だったんですか!?」
「そうそう、仲良しトリオの努力の結晶なんだよ。それにムツキ、イヨリ、ウミノのアルファベットの頭文字を取ってミウ。古代エジプトの知恵の神、トートを合わせて名前にしたんだぜぃ」
この人達は奇人だが、仕事の出来る奇人らしい。
「おっはよー!」
海乃さんが曲がり角から勢い良く出てくる。
後ろには睦規さんもいる。
「あれ?時晴は?」
「時晴は朝食を作っている」
「「朝食って、誰の?」」
「そりゃわたしたちのだよ一緒に食べる?食べようよ」
「いえ、もう食べてきたので」
自分達で作れるのでお母さんに無理させたりはしない。
お母さんは朝弱いしね。
「というか、毎朝作ってもらってるんですか?」
「ここに住んでるんだから当たり前でしょお?」
ほ。
ほ。
「四人が?」
「そ」
少し呆気に取られてしまった。
よく考えたら仲良しトリオは生活力ゼロじゃないだろうか。
なんか、、、時晴がまともに見えてきた。
「さー食べよー今日はパンの日だー!」
海乃さんは走りながら消えてしまう。
「キミらはご飯作れる?」
きっと頼まれる。
けど仕方ないか。
「お昼作ってくれないかい?昨日の昼と夜は完全食で簡単に済ませたから、今日は贅沢しよーじゃないの」
「「、、、お任せあれ」」
言ってしまった。
バイトでお世話になる以上、断りづらい。
伊寄さんに連れられ、簡易的な休憩室に来た。
時晴は二つのトースターからパンを二枚ずつ取り出し、皿に乗せていく。
「よう。アワリ、アワナ。お前らの分無いけど、要る?」
「「食べてきたので!」」
時晴は思ったより強い返しが来た事にやや怯みつつ、皿や牛乳が入ったコップをテーブルに乗せる。
海乃さんはトーストにピーナッツバターを塗りたくりながら言う。
「今日は何しよっかそうだわたしの専門分野幻術を教えてあげるよ楽しもうね」




