第四十三話「美しい」
空間に開けた穴を通り、幻想科学研究所の前に出る。
本当は昨日行うはずだった催しを、今日改めて行う。
「「さむー」」
ロシアで暮らしていたミーセは寒さに強いのか、上着無しでも寒そうにしていない。
「早く中に入ろ」
小走りでドアに向かい、厳重なロックを手早く解除していく。
ガチャリと開いたドアから室内に入ると、空気が暖かかった。
「おーい、そのまま開けておいてくれー!」
振り返ると、時晴とイズがこちらに向かって歩いてきていた。
時晴はミーセと同じ病衣を着ている。
パワードスーツに踏みつけられたり、身体の中に銃弾を埋め込まれたりしてボロボロだったが、一日でかなり良くなった。
医療は日々進歩している。
「時晴!」
ミーセは時晴に思い切り飛びつく。
抱きつく、の方が近いかもしれない。
「み、ミーセ!?」
いつも自信満々なミーセだが、時晴にだけは奥手気味だった。
自分から抱きつくなんて大胆な事をするのは珍しい。
「時晴が無事で本当に良かった」
「、、、ああ。ありがとう」
時晴は困惑しつつも、ミーセを受け止める。
「ミーセも身体は大丈夫か?」
「うん!」
ミーセは時晴の腕にくっつく。
充実感溢れる笑顔が眩しい。
「いつまで入口にいるつもりぃ?」
伊寄さんが後ろで腰に手を当てている。
さっさと移動しよう。
「ミーセちゃん!改めて日本にようこそ!」
睦規さんと共に先に準備をしていた海乃さんが言う。
「わぁ、、、ボクのために?」
造花や折り紙で飾り付けられた部屋。
ミーセ・ラブゼアン歓迎パーティーと書かれた垂れ幕もあった。
「本来なら昨日行うはずだったが、今からでも遅くは無い」
にぎやかなパーティーを始めよう。
一緒に遊んだり、豪華な料理を作ったり、食べたり、歌ったり、また食べたり。
これほど楽しい時間、訳の分からないタイムマシン改造計画なんかのために奪われなくて良かった。
「ふぅー!」
「遊んだ遊んだ!」
研究所内にある、研究林で新鮮な空気を吸う。
空は既に暗くなり、風も冷たい。
「いやー、遊びすぎて疲れたな!でも後悔はしてない!」
時晴は研究林の地面に寝転がりながら言った。
「、、、そう言えば、ミーセは日本でやりたい事ってあるのか?」
ミーセは時晴の隣に腰掛けながら答える。
「色々あるよ。医療とか、芸術とか、あと会社も作ってみたいかも!」
「はは、ミーセなら全部出来そうだ」
時晴だけじゃなく、きっと誰もがそう思うだろう。
「でもな、大変だなって思ったら頼ってくれよ。いつでも助けるから」
案外、ミーセに足りなかったのはこれかもしれない。
何でも出来るミーセを、あえて助ける存在。
ふと、ミーセの顔を見た。
「うん!」
幸せに満ち溢れた、美しい顔だった。




