第四十一話「切り捨てた」
ミーセの注文通りの幻術を作り始める。
精神を共有した双子である私達の知能は常人の一、五倍以上。
さらに目と手が四つある。
作業効率は非常に良い。
「ミーセ!こっちはもうすぐ出来るよ!」
「そっちは?」
ミーセもミウ・トートで幻術を超高速で作成している途中だが、手はそこまで速く動かしていない。
額の辺りから伸びている触手がミウ・トートに刺さっており、そこから電気信号を送って操作を行っているらしい。
「もう、少し」
絞り出すように返事をするミーセ。
無理も無い、ついさっきまで脳を酷使して戦っていたのだから。
触手の本数が少ないとは言え、操作と同時に話すのはかなり大変らしい。
そう言えば、ミーセのミウ・トートと時晴から預かった演算装置が電気のロープで繋がっている。
何のためなのだろうか。
そう思いつつも、邪魔をしないために聞かないでおいた。
「私達は私達の事に専念しよう」
絶対安静の時晴、額から触手を伸ばすミーセ、超スピードで手を動かす私達。
客観的に見ればかなりシュールだ。
それでも、これが最適解。
「横の伍」
さっきから何度か、イズが電磁波を使って索敵をしている。
私達の電子機器に影響を与えないように、範囲を小分けにしながら残った構成員を探しているようだ。
「下の肆」
やがて泥沼を使ってどこかへ行ってしまった。
イズの方を気にしても仕方ないか。
自分達の幻術作成に集中しよう。
「「完成っ!」」
とりあえずミーセの望む幻術は出来た。
「ミーセの方は?」
「もう出来てるよ」
いつの間にか追い越されていたらしい。
「それじゃあ」
「始めるよ」
寝かされた時晴を挟むように位置取り、二つの掌の間に膜を張る。
残りの二つの掌は時晴の腹に向ける。
ミーセは電気でピンセットのような器具を作り出し、時晴の腹に突き刺す。
いや、突き刺さったと言うよりも通り抜けていた。
膜はモニターとなり、時晴の体内の様子を映し出している。
「うん、ちゃんと映ってるね」
「うわ、これどうなってるんだ!?」
時晴から見れば自分の身体に器具が刺さっているような状態だ。
「時晴、動かないで」
「喋ると手元が狂って死ぬよ」
「これからミーセが説明するから黙って聞いて」
時晴は息を飲んだ。
「この幻術にはブレイズフィストの式を流用してるんだよ。おかげで特定の物質だけを掴む事が出来るの。つまり、時晴の身体は通り抜けて、銃弾だけを掴める」
ミーセはモニターを見ながら精密な動きで銃弾を掴み取ろうとしている。
「掴んだよ」
ここまでは簡単。
まっすぐ銃弾に向かってピンセットを伸ばすだけで良い。
ただ、問題はここからだ。
「ここからは」
「身体を傷付けないように外まで運ばないといけないのね」
ピンセットは身体を通り抜けられるが、弾丸は違う。
まずは弾丸が埋め込まれた筋肉に穴を開け、通り道を確保する。
「時晴、痛いかもしれないけど動いちゃダメだからね」
左手に針のように細い器具を生み出した。
右手はピンセットで弾丸を掴んで固定し、左手の針で時晴の身体を刺す。
時晴は歯を食いしばっているが、動かないように何とか耐えている。
何度も針を突き刺し、体内に道を作っていく。
「出来た」
通り道が完成したようだ。
針を抜き取り、静かに息を吸う。
「あと少しだよミーセ」
「うん。ここまで来て失敗なんて絶対に出来ないよ。絶対に、助ける!」
モニターに映る体内の様子を元に、慎重にピンセットを動かす。
この幻術は、エックス線検査のように身体の一部を透かして、モニターである膜に映す事が出来る。
私達がミーセの目となり、手術の手助けをしているようなものだ。
「時晴」
「ゆっくり口を開けて」
指示に従い、口を開けた。
まるで歯医者だ。
ピンセットで掴まれた銃弾は食道に突入した。
首の方へ上っていき、最後は。
「ゆっくり、大きく息を吸って」
「そう、そのまま」
狭い喉の部分を突破し、口から銃弾が見えた。
「最後まで気を抜かない!」
完全に口から出た。
「「「終了っ!」」」
ミーセはピンセットを消し、代わりに生み出したナイフで毒入りの銃弾を空中で切り捨てた。
「はは」
「やっと、終わったね」
「うん、ボク、疲れちゃっ、、、た」
ミーセは時晴の上に倒れ込む。
「おいっ!ミーセ!」
「大丈夫だよ」
「疲れて眠っちゃっただけだから」




