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第二話「呟く」
通行人で溢れかえっている街。
棒立ちの彼は呟く。
「コイツらホントどうかしてるぜ。いつ誰が人を殺し、人に殺されるかなんて気にしちゃいねぇんだぜ」
一人でブツブツ呟いている彼を通行人たちが不思議そうに振り返る。
「もっと危機感を持てよ。だからオマエらは死ぬんだよ」
彼はいくつかのボタンが付いた小さな機械を取り出す。
「ま、オマエらの自業自得。オレは捌きを下しただけだ」
ボタンのうちの一つ、赤色を押す。
いくつもの爆発が街を包み込む。
閃光と熱風が人の感覚を消していく。
彼も爆発で消えた。
満足そうな笑みを浮かべながら。
少し離れた所にいた通行人たちはパニックを起こす。
「何だ!?何が起こってんだ!?」
「ママぁ、、、ママぁ。」
赤いボタンは、押されると一分でもう一つの機能を発揮する。
大爆発。
これまでとは比べ物にならない威力だ。
その瞬間を、周防頼我は待ち望んでいた。
逃げ惑う青年を、転んだ老人を、泣いている子供が、消えた。