第三十六話「反射」
エレクトロバブルは周囲の電気を吸い取り、力に変える。
電気を奪う事でミーセの邪魔をしないように吸収範囲は狭めたが、それでも直径二メートルくらいの攻撃範囲はある。
シャボン玉を飛ばし破裂させた瞬間、フィルターを特殊な牢獄に転移させる。
ダメージを与える事だけが倒す方法という訳では無い。
「動かないでよ」
フィルターが私達がいるはずの場所を警戒して動いていない間に十分に電力を溜め込んだシャボン玉を発射した。
窓は開けておいたのでその隙間から密かに幻視者の背中を狙う。
「バレバレだよ」
フィルターは急に振り返り、シャボン玉に壁をぶつけた。
標的に届く前にシャボン玉が破裂し、転移の式が展開された。
壁は転移せず、地面が僅かに削れただけだ。
「「な」」
「何で読まれた、とか考えてるか?」
まさにそうだ。
相手の思考の隙を突いて奇襲したはずなのに。
こいつ、心を読む能力でもあるの?
「簡単な仕組みだよ。ガラスの反射だ」
確かに窓ガラスは、鏡ほどでは無いとはいえ反射した物を映す事が出来る。
だが、私達に気付かれずに真後ろを反射で見る事なんて出来るのか?
「窓は建物以外にも付いてる。例えば、これだ!」
大型の乗用車がこちらに飛んでくる。
半透明の壁で持ち上げて投げたって事ね。
って冷静に分析してる場合じゃないっ!
「「わうっ!」」
間一髪、転移の式で開けた穴に転がり込んで助かった。
さっきまでいた場所では車と建物がぐちゃぐちゃに大クラッシュしている。
そう言えば敷地内に大型の車両はいくつも置いてあった。
停車してある角度によっては車窓からの反射も使えたのかもしれない。
「オレにはこの物質選別の壁がある。車でも隕石でも、何でも防ぐ事が出来る」
壁を使ってもう一台車を持ち上げながら言う。
「だがそっちには大した防御手段も無い!一瞬壁を作るか、避けるか。一度でも攻撃を受ければ死ぬ。その条件は同じなのに難易度が全然違うよな」
勝ちを宣言しているつもりなのか。
「ふーん。それで?」
「私達に一度でも攻撃を当てたんだっけ?」
「はっ、それはそっちも同じだろ?」
投げられた車を、強化された脚力で横に跳んで避ける。
「ま、先に攻撃を受けた方の負けっていうのはシンプルで良いかもね」
改めて勝利条件を設定する。
フィルターを二本の人差し指で真っ直ぐ指して宣言する。
「私達が触れたその瞬間から、あんたは何も出来なくなる」
「生かすも殺すも全て私達次第」
フィルターは嘲笑う。
「はっ、ははは。やってみろよ!オレが先に殺してやる!」
壁を正面に作り出したフィルターが右腕を構える。
一方的な連射、フィルターの最大の武器だ。
対する私達の最終兵器はもっと地味だ。
「「ナックルブリンカー」」
ミーセはクレバーテンタクルという高度な幻術を扱えるようになった。
イズは自身の幻覚、五指登録の登録容量を増やす事に成功した。
私達だって成長しなかった訳では無い。
「最高に外道な幻術」
「見せてあげるよ」




