第三十一話「最小限」
フィルターの掌から光の弾が発射される。
ペネトレートマシンガン。
腕に取り付けられた大量のバッテリーから電力が供給されているのだろう。
建物の壁がスポンジのように穴だらけになる程の威力。
「へぇ、防いだのか」
バブルウォールで防いだ時のデータを元にナックルエレキの強度をかなり上げた。
拳が纏う電撃のバリアは相手の光弾より硬くなった。
相手は自力で幻術の式を立てた訳ではない。
これ以上威力が上がる事は無いだろう。
とは言え、弾く事が出来るのは拳の前面、第一関節と第二関節の間のみ。
「これが限界?」
「私達はもっと攻撃力高いよ」
強化の式とナックルエレキ、どちらも強度を上げているため実はけっこうキツい。
電力消費は多くなるし、強化の式は肉体への負担も大きい。
短期決戦が理想だ。
ミーセは額の辺りから伸びている触手でフィルターの横顔を狙う。
フィルターは咄嗟にほぼ透明の壁で顔を守る。
しかし壁にナイフが当たる瞬間、転移の式で開けた穴にナイフを避難させる。
穴が繋がっていたのはフィルターの脚のすぐ横。
「ぐっ」
刺さったナイフは全身に痺れをもたらし、機能停止させる。
だがフィルターは止まらない。
「刺さったはずじゃ、、、」
思わず言葉が漏れてしまう。
ナイフは脚から抜け落ち、ロープはミーセの元へ戻っていった。
「オレの物質選別で作った壁は任意の物質だけを通したり、任意の物質だけを通さなかったり出来る。ミーセの方はもう分かってると思うから言うけどさ」
つまり素早く小さな壁を体内に生成し、壁は脚やズボンはすり抜け、ナイフだけを押し出した。
一瞬でナイフを取り除いたために麻痺の効果を最小限に抑えたのだ。
「オレの幻覚とこの幻術は相性最高だ。もっと見てくれよ」
ミーセに向けて鋭い電気の弾丸を連射する。
壁を盾のように正面に置き、弾丸を撃つ。
さっきの話が本当なら、弾丸だけが壁を通り抜け、それ以外の物質は通れない。
中距離から一方的に攻撃出来るという事だ。
ミーセは連射をナイフで丁寧に一つ一つ弾いていく。
ロープの触手を超高速で動かしているため残像で点滅して見える。
「こっちも忘れちゃダメだよ!」
疎かになっている背後を狙う。
弾丸はそのままの方向、壁だけノールックでこちらに向かわせてきた。
前から迫ってくる壁をそれぞれ斜め前に転がって回避する。
「私の事も忘れるなよ」
タイミングが悪すぎる。
パワードスーツに身を包んだ女、通称モーター。
息を潜めていた敵がまたも奇襲を仕掛けてきた。
体勢が整っていない、防げない!
しかし。
「くっ!?」
パワードスーツが真横から業火に包まれた。




