第二十九話「石ころ」
「もしもし?」
電話をかける。
「時晴!」
「今どこにいる?」
時晴は最初イズと共に行動していたが、イズと幻視者の戦いになると流石についていけない。
イズに代わってミーセが幻視者と戦う事になった時には、既に時晴はいなかった。
「今、建物の、中だ。地下だと、思う」
時晴は息を弾ませながら言う。
「時晴、走ってたの?」
「ああ。役に、立ちそう、な、物を、探し回ってた」
当も無く建物の中を探し続けていたのか。
探し回っていた、、、過去形。
「つまり今は何か見つけたって事?」
「もしくは諦めたか」
「俺が諦めて寝てるとでも思うか?」
時晴は自信を持って言った。
「はっ、そんな訳無いよね」
「それで、何を見つけたの?」
時晴はタブレット端末か何かを操作しているのか、意識を手元に移したようだ。
「ああ。パワードスーツの設計図だ。電源がつけっぱなしで助かったよ。かなり焦ってたのかもな」
設計図。
つまり強い部分も弱い部分も全て丸分かりになる。
「これによると、排熱機構は脚にあるらしい。排熱機構をオーバーヒートさせられればパワードスーツは動かせなくなる」
明確な弱点。
冷却が出来なければスーツ内に熱が溜まり続け、制御機構はオーバーヒートしてしまうだろう。
「時晴、パワードスーツを倒しに行こう」
「相手は時晴を全く警戒してない。時晴なら意表を突ける」
実際、時晴は私達やミーセと比べ物にならないくらい弱い。
だが、弱いからと言って役に立たないとは限らない。
小さな石ころでも、大きな歯車を止める事が出来るのだ。
「分かった」
ミーセを連れ去るような連中相手に逃げは通用しない。
ここで徹底的に潰しておかなければ。
「でも殺したり再起不能にしたりするのは無しだぞ。良いな?」
踏み越えてはならない一線という物か。
取り返しのつかない事をすると、自身の心にも取り返しのつかない傷を付ける。
「もちろん、分かってるよ」
「完治出来るレベルでボコボコにしてやるからね」
「、、、本当に分かってるのか?」




