第二十話「触手」
イズの下の肆、泥沼によって転移し、建物の屋上に降り立った。
四階建てくらいの高さで、ミーセと幻視者の戦いの全体像が見える。
「バブルオブザーバー」
感覚を持ったシャボン玉を掌から一つ生み出す。
より詳細な情報が欲しいため、偵察させるのだ。
シャボン玉が見た物、聞いた物は私達にも共有される。
相手は私達がここにいるという事を知らない。
そのアドバンテージを最大限に活かすため、来たるべき奇襲の時に使う情報が必要だ。
「、、、を潰し損ねたのも予想の内なの?」
「まぁね。予想と言うより可能かどうか試しただけって感じだけど」
余裕を見せる金髪の幻視者。
空中で立っているように見えるが、半透明な足場がうっすら見える。
シャボン玉とは言え、近付きすぎれば気付かれてしまう。
建物などの陰に隠れながら様子を窺う。
「これからボクがどんな事をするかも予想してみる?ボクに勝てるか試すって言い方でも良いけどね」
ミーセはそう言うと長い銀髪を細い電気のロープで縛った。
「ヒント。この幻術の名前を教えてあげる」
ミーセは右脚に巻いた演算装置に小さなバッテリーを差し込みながら言う。
「クレバーテンタクル」
頭、背中、腰、腕、裏腿、脛から電気のロープがうねうねと伸びていく。
ロープの先はナイフになっていて、ガラガラヘビの尻尾のように揺れている。
「へぇ、幻術ってそんな事まで出来るんだ」
金髪の男は床にしていた半透明の板を降下させ、地上に降り立つ。
「予想だと、その触手が自由自在に伸び縮みして攻撃する。合ってるか?」
「ちょっとは当たってるよ。ちょっとだけね」
それだけ言うとミーセは姿勢を低くして、触手のようなロープをなびかせる。
「でも本質は別にある」
強化された脚力で駆け出した。




