第十九話「だらり」
「なん、とか、なった、ねぇ」
伊寄は睦規に肩を貸してもらい、立ち上がりながら言う。
遠くの建物の壁に激突したモーターに向かって三人は歩き出す。
「海乃、腕は大丈夫か?」
だらりと垂れ下がった両腕にはパイプが複数取り付けられた機械が装着されている。
単に重いからというだけではなく、強化の式で身体を酷使したのも腕が動かない原因だ。
強化の式は身体能力を上げる事が出来る幻術だが、本来の身体の限界を超えてしまうため頼りすぎてはいけない。
「しばらくは動かないかなでも骨とか神経とかには異常無しだよ」
治癒の式を応用すれば、身体の状態をある程度把握出来る。
「意識があるか無いか分かんないね」
海乃は壁に寄りかかったような状態のパワードスーツを見て言った。
スーツには多くのひびが入り、一切の身動きをしていない。
「ヘルメット脱がせよぉか。どんな顔か見てみたいし」
「そうだな。だが簡単に取り外せるとは限ら、な」
三人はフラフラとよろける。
疲労は確かにあったが、すぐに意識を失う程ではなかった。
「、、、睡眠ガスはこれで最後か」
バタリと音を立てて倒れた三人を無視し、モーターはゆっくり立ち上がる。
「テレポーターは奴らに負けたと考えるべきだろう。ならばフィルターとライター、どちらかに合流すべきだな」
調子を確かめるように首などの関節を回すと、どこかに向かって走り出した。




