第十七話「ノズル」
イズは海乃、伊寄、睦規がいると思われる方向に走っていた。
田島姉妹に様子を見てきてと言われ、それを愚直に実行しようとしているのだ。
「上の参」
右手の指を三本立て、上に向ける。
すると、左手の中に木刀が生み出される。
正確に言うと、木刀を生み出したのではなく別の場所から転移させたのだ。
「ま、ち」
微かに声が聞こえる。
イズは立ち止まり、耳を澄ました。
「まちな、さい」
少し離れた場所で男が倒れている。
武器のような物は見たところ所持していないようだ。
「麻痺しているのか」
手を伸ばし、苦しそうな表情をしている。
イズはそれを何とも思っていない。
「殺しはしない。だが意識は落とす」
イズは右手を前に突き出し、指を立てて下を指す。
「下の伍」
雷電が倒れている男に飛ぶ。
しかし、男は転がってそれを回避した。
「はぁ、はぁ、こんな所で、転がっている訳には、いきません!」
男は何とか立ち上がり、懐から何かを取り出した。
それをイズに向け、言い放つ。
「我々の邪魔をしないでいただきたい!」
男が持っていたのは火を点ける道具。
銃身とも言うべきノズルが長く、安全に火を点ける事が出来る。
現代ではまず見かけない物だ。
「上の壱」
速度を制限する目に見えない境界を発生させる。
この境界より内側は一定の速度を超える物体は侵入出来ない。
イズは男が持つ物を銃のような武器であると考え、警戒したのだ。
「いや、これは」
イズは悪い予感を信じ、横に飛んだ。
「避けましたか、、、ですがそう何度も回避する事は出来ませんよ」
引き金を何度も引く。
速度制限を素通りし、銃弾らしき物が空間に直接出現する。
イズは銃口の向きから攻撃を予測し、軌道が見えない銃弾を回避していく。
「転移の式で銃弾を空間に出現させている」
「その通りです。あなたは幻術を使えるようですし、分かる人には簡単に分かる事なんでしょうね」
イズは、分かる人、という言い方に何とも言えない引っかかりを感じた。
「下の弐」
火炎を前方に放射し、牽制しつつ建物の陰に隠れる。
このまま逃げる事も可能だが、それでは田島姉妹の戦いに割り込まれてしまうかもしれない。
「ようやく痺れにも慣れてきました。もういつも通り動けますよ」
出現した後の弾丸が地面に転がっている。
銀色の球体で、大きさは大豆程度だ。
試しに木刀で潰してみる。
「ただの金属ではないな」
木刀に力を込めると、簡単に形が歪んだ。
そして銃弾の中からはオレンジ色の液体が少量流れ出たのだ。
「どうしました?もう逃げてしまいましたかね?」
詳しく調べている暇は無さそうだ。
「下の参」
裂風で切り裂こうとしてみるが、相手は常に走り続けているため狙いを定められない。
「実戦使用は初だが、出し惜しみも出来ないか」
イズは右手の指を左に向けて伸ばす。
その本数は二本。
「横の弐」
イズの持つ木刀が電気を纏い、バチバチと音を立てる。
言うなれば、雷刀。
「次は接近戦だ」




