第十三話「ひび」
「よう、ミーセ・ラブゼアンを取り戻しに来たのか?」
「ああ、勝手に連れ去られちゃ困るからな」
時晴とイズは金髪の男と対峙していた。
「オレたちにはミーセ・ラブゼアンが必要なんだ。ちょっと我慢してくれよ」
「ミーセの意思も尊重せずに、一方的に必要とするなんてのは都合が良すぎる」
「そうか、じゃあ黙っていてくれ」
金髪の男は右手を後ろに引き、何らかの攻撃を仕掛けようとしてくる。
「何か来るぞ」
イズの言葉を聞く前から時晴は警戒を怠っていなかった。
しかし。
「うがっ!?」
真横から車に突き飛ばされたかのように時晴の身体は吹っ飛んだ。
「下の肆!」
イズは地面に泥沼を作り出し、その中に左手を突っ込んだ。
「上の弐!」
強化の式で身体の強度を上げ、近くの建物の壁に激突する寸前の時晴を無理矢理腕で受け止めた。
「があっ!?」
ぶつかる側もぶつかられる側もかなりの衝撃を受ける。
イズは声一つ発しなかったが。
「いっつ、、、ありがとうイズ。助かった」
イズは時晴を沼を通じて引き上げる。
「問題無い。上の伍」
衝撃でひびが入った骨を自らの幻覚、五指登録によって治癒させる。
「はーん、幻視者。オレ以外の幻視者に会ったのは初めてだよ」
金髪の男はへらへらと笑いながら言う。
「、、、お前も幻視者って事か」
離れた位置からの高火力な攻撃。
しかも具体的な攻撃方法は不明。
「イズ、何か今の攻撃で分かった事は無いか?」
時晴は目の前の男から目を離さないようにしながらイズに尋ねる。
「今のが幻覚による攻撃である可能性はかなり高い。僅かにだがほぼ透明の板状の物が目視で確認出来た。その板を生み出し、操るというのが奴の幻覚だろう」
「流石だな、イズ。今の一瞬でそれだけ分かるなんて」
イズは照れたり誇ったりはしなかったが、少なくとも悪い気はしていないようだ。
「対処法は思いついたか」
「俺に出来る事は何も無さそうだ。だけど、俺以外なら何とか出来るかもしれない」
時晴は自信ありげに言った。




