第十二話「散在」
「あっ、モーター!」
構成員の一人が奥の方を見て叫ぶ。
「お、来たね」
伊寄は腰に手を置きながら言う。
作業を終えた時の農家のようだ。
「例のパワードスーツがモーターって事らしいね」
蓋のように開いた地面からパワードスーツが飛び出し、海乃達の前に立ちはだかった。
「攻撃していると聞いて点検を後回しにしてまで来てみたら、、、たった三人なのか?」
「お前達の相手は三人で十分だと判断した。主たる目的はミーセの奪還。無理に戦闘を行う必要は無いからな」
睦規は白衣の内ポケットからゴムボールを取りだしながら言い放つ。
モーターは腰をやや落としながら、機を窺っている。
「全員、他に加勢しろ。ここは私だけでやる」
「で、でも!モーターさん!」
「恐らくここは陽動、本命はミーセ・ラブゼアンだ。彼女を絶対に逃がすな。行け!」
「はいっ!」
まだ動ける十数人は散っていき、残ったのは四人だけになった。
大型の車両や変電設備などが散在しているこの場所では下手に大規模な攻撃は出来ない。
衝撃で爆発を引き起こしたりしかねないからだ。
「モーターさんさぁ、ミーセちゃんを攫って何するつもりだったのよ?これだけ組織的、計画的な誘拐なら、それなりに大きな目的があるんじゃーあないの?」
「それを貴様らに教えてやるほど親切ではない」
モーターはスーツの力で大きく踏み込んだ。
強化の式を使っているかのような圧倒的な速度で伊寄の眼前に迫る。
勢いを腕に流し、高威力の右ストレートを放つ。
「はあああっ!」
海乃が指揮棒を間に挟み、衝撃を上に逸らす。
一瞬自由な時間が出来た伊寄は蹴りをスーツの腹に叩き込む。
「つっ!?かったい!」
あまりの硬さに後ろによろける伊寄。
その隙にモーターは素早く左足を軸に回転し、海乃の側頭部に回し蹴りを浴びせる。
さらにそのままの勢いで伊寄をタックルで吹き飛ばす。
「速いな」
睦規の投げたゴムボールは地面とパワードスーツの脚部を氷で固めた。
「良いクールダウンになった」
氷は内側から無理矢理砕かれ、キラキラとした破片を舞わせる。
「もっとも、冷却機能は十分に搭載されているがな」
機械の鎧を身に纏ったモーターの声は凛々しい女性を思わせる。
睦規は冷徹な膝で気絶した。




