第六話「タコ殴り」
溜めた電力で攻撃しなかったのは、確実性を増すためだ。
避けられれば反撃が来るし、そうなればまず防御も回避も出来ないだろう。
それよりも外す事が無い真下、男の子の背中に発射する事で自分達が転移し、安全を確保する事を優先した。
「あ、あれ?ここどこ?」
男の子が顔を上げると困惑の表情が見えた。
この男の子からすれば、伏せていたらいつの間にか違う場所にいたと言う事になる。
地面ごとえぐって転移させているため、顔を上げるまで分からなかったなのだろう。
「ここは近くのビルの屋上よ」
「しばらくここで大人しくしておいてね」
「う、うん。おねえさんたちは?」
スマホで他の皆にメッセージを送りながら答える。
「あの男をとっ捕まえてくるよ」
そう言って屋上から飛び降りた。
転移の式で空間に開けた穴に飛び込み、安全に着地する。
さっきの場所は近い。
きっとまだあの男はうろついている。
「「私達はここにいるぞ!今度こそ万全の体制で戦える!」」
自分達の方から位置を教える。
普通、自分の位置を易々と相手に教えるのは得策ではない。
だが、罠を張るならば別だ。
「馬鹿かお前ら!俺は触れるだけで殺せるんだぞ!ハッハーッ!」
細い路地に突然現れた男は、左手を突き出して距離を詰めてくる。
「その左手は転移の式で触れた物を強制的にどこかへ飛ばす」
「多分何重にも制限の式を付与して無理矢理引きちぎってる」
僅かな時間に見解を述べる。
もうあと一メートルの所まで近づいてきている。
「だからどうし」
「でも電力を大量に使うんじゃない?」
足元に泥沼に変化していて、足を取られた男に遠慮なく告げる。
「下の弐」
背後のイズが右手の人差し指と中指を地面に向けて伸ばすと火炎が吹き出した。
「くああああっ!?」
男は身体を捻って左手で炎を受け止める。
手に触れた瞬間炎は燃え広がる事なく消えていくが、放射され続けているため受け止め続けなければならない。
「いつまで耐えられるかな?」
「ちなみに沈んでいく先は私達の前。いつでも殴る準備は出来てるよ」
「あああああああっ!やめろ!止めろ!この炎を止めろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
沈むまでは炎、沈んでもタコ殴り。
炎を受け止めるための幻術が電力不足で使えなくなれば身体を焼かれ、それを耐えきっても今度は私達に電撃のバリアを張った拳で殴られる。
転移の式でどこかに瞬間移動しようとしても、基本的に同時に二つの幻術は使えないため、炎を受け止めるのをやめなければいけなくなる
「子供を傷つけようとした罰よ」
ついに電力が底をついたのか、炎を受け止められなくなった。
「悪い心も焼いちゃえば?」
「あああああああああああああっ!」




