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誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

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田島沫奈・後

名鑑・四十四


前世名鑑


名鑑と名に付いているが、記録されたデータの集まりという訳ではない。

体液を一滴、検査機器に読み込ませるだけでその人物の前世のデータが表示される。

この名鑑がどのような技術で成り立っているのか誰にも分からず、誰も知ろうとしない。

前世については、生存していた年代、戸籍に登録されていた名前などが分かる。

前世の体液に含まれるデータが一度でも医療機関などで記録されていた場合、前世の前世も表示される。

前世の情報を使用する事で、前世がどの時代にいるべきなのかを逆算出来、その時代自体のデータを得られる。

この技術を応用して作られたのがタイムマシンである。

前世のいた時代からの年数を基準にする事で目的の時代に移動する際の誤差をほぼ無くせる。

タイムマシンも未知の技術で成り立っているが、最大手リヒゼン社はタイムマシンを何らかの方法で製造、開発している。

巫女のような人物がいて、未知の技術を神に教わっていると主張する者もいるが、真偽は不明である。

「ちょっと遅くなったけど」


「ま、作ってよかったんじゃない?」


時晴、イズ、田島姉妹は研究所内の研究林にいた。


「遺骨が無いのは残念だけど、こういうのは気持ちが一番大切だよな」


研究林に建てられた小さな墓。

身体が丸ごと消滅してしまったので遺骨を埋める事は出来なかったが、代わりに残った服を埋めておいた。


「解理は死んだ。ここに解理の意思は残っていない。意味はあるのか?」


「まぁ、無いのかもな」


イズには死者を弔うという行為が無意味に見えるのかもしれない。


「時晴が言ったみたいに、こういうのは気持ちの問題なのよ」


泡里は子供に教えるように優しく言った。


「残された方のね」


イズはまだ分かっていないのか反応が無い。


「死者の気持ちは分からないけど、自分がどう生きたいかならちょっとは分かるでしょ?」


「死者に、私はこう生きたい、あなたの経験は無駄にしません!みたいなのを死者に誓うのがお墓って物じゃない?」


「まだよく分からん」


分からない事に怒ったりはしないようだ。


「ま、大人でもはっきりした事は分からねぇ。今無理に分かろうとしなくてもいいんじゃないか?」


「、、、誓いか」


イズは時晴の言葉を聞いていなかった。


「上の参」


「「イズ?」」


何を思ったか、イズは日本刀を取り寄せた。

家に置く訳にもいかず、研究所の倉庫にしまっておいた物だ。


「私にはもう必要ない。必要にならないような生き方をすると解理に誓いたい」


そう言うと日本刀を地面に突き刺した。


「それ、もう使わないのか?気に入ってると思ってたんだけど」


「元よりこれは解理に貰った物だ。返す事に躊躇いは無い」


気に入るという表現が合っているのか分からない田島姉妹だったが、時晴から見ればイズは刀剣を気に入っていたように見えたのかもしれないと考え、深く追求しなかった。


「そっか。じゃあこれも遺骨の代わりだね」


四人で思い切り柄を押し込み、刀身が見えなくなるまで地面に埋めた。

田島姉妹は解理の事が未だによく分かっていない。

自分の目的のためなら平気で人を殺せるのに、普通の暮らしをしようとしていた。

イズの感情を育てなかったのに、普通に暮らせとイズに言い残した。

誰にも負けないほど強かったのに、死ぬ時はあっさり消えた。

私のような人を、君達なら生み出さないと思ったからと言っていたのに、何故田島姉妹なら出来ると思ったのか。


「、、、まだ」


「どうして欲しかったのか分からないよ」





「おーうい!ご飯はまだかーい!」


伊寄の声が研究林に響き渡る。


「お前らも食べていくだろ?今日は俺の自信作、うどんだぞ!」


「レトルトのうどんは自信作に含まれない!」


「含めたきゃ最強のアレンジレシピを編み出すべし!」


「やってやろうじゃねぇか!手始めにピーナッツバターだ!」


時晴はキッチンに踏み込みながら宣言した。


「わたしのピーナッツバターが欲しければ力づくで奪ってみな!」


「ならば俺はチーズとミートソースを死守する」


冷蔵庫の前に陣取る海乃と睦規。


「ピーナッツバターはともかく安心安全のチーズとミートソースまで確保されたか!」


「早く食べたいんだけどねぇ」


伊寄は座るとだらりと机に溶けた。


「私も何か食材を持ってきた方が良いか?」


双子は呆れながら言った。


「イズはあんなのに参加しなくてもいいよ」


「あの人達の真似したらバカになるからね」


しかし、田島姉妹は楽しそうに笑っていた。

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