表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

259/307

上野途作・後

名鑑・四十二


ポータブルクローゼット


小さな長方体型の収納家具。

高さ二十センチメートル程で、正面にはスキャナが付いている。

スキャナで衣服のタグを読み込むと、ポータブルクローゼット内に小さくして収納する事が出来る。

この技術は幻術によって実現されているため、開発、製造については一般に知られないようになっている。

しかし、どのような技術で成り立っているか知ろうとする者はいない。

ポータブルクローゼットが最初に作られたのがいつなのかも不明である。

神が人類の進化を促すために与えた技術だとする学説もあるが、真実は定かではない。

弾丸のように飛んでくるジェミー・マムサカを、二十体の霊体で迎え撃つサドリア。

ただ前に盾として生み出す訳ではなく、腕や頭をジェミーの一部に当てる事で、勢いを弱めつつ確実に受け止める。


「物量だけで受け止めるよりも効果的、か」


サドリアは以前戦った少女の事を思い出した。

質より量、長年の戦闘経験で刻まれた教訓を塗り替えたあの少女。


「悔しいが、質も重要だと言う事か」


「うあっ!いてて、危なかったぜ」


霊体に拘束される前に靴裏の白いボールで跳ねて脱出した。


「あれを使うしかねぇか!」


ポーチから取り出した八つの青いボールを指の間に挟んでいる。


「削り取るっ!」


ボールを投げると、壁、床、天井を縦横無尽に跳ね回り始めた。

霊体は無限ではない。

このまま霊体でガードし続けていては弾切れを起こしてしまう。


「私に数で戦おうとは、盲点だったな」


このままなら、負ける。

ジェミーはいつの間にか大きな半透明の茶色いボールの中にいて、青いボールから身を守っている。


「仕方ない、奥の手を使おう」


戦場にある物は何でも活用する。

元軍人のサドリアにはその教えは叩き込まれていた。


「はっはっは!終わりか?じーちゃ」


ジェミーは茶色の半透明なボールの中で気を失っていた。




「助かったよ。君が来てくれなければもう少し苦戦していた」


「苦戦する、じゃなくて死んでた、だろ?」


「ふむ、まぁその可能性もあっただろうな」


サドリアは利得を呼んでいた。

戦闘中、霊体をジェミーに見つからないように廊下の外に生み出し、ホテル内に援軍を探しに行かせたのだ。

空間打撃ならばボールの障壁を無視して直接頭を打ち抜ける。


「もし別の誰かが援護していたとしても、きっと役に立っただろう」


サドリアは呟いた。




「うおおおおおおおおおおっ!」


首に両手が添えられ、まさに断頭台。

落下中に出来る事は少ない。

赤黒い両手を背中に生やし、少しでも衝撃を和らげる。

衝撃吸収が目的であるため、硬度は上げない。

腕が破壊される事も承知の上だ。


「があっ!?はっ、はっ、、、。何とかなったっ」


衝撃はゼロではないが、おかげで二人とも地面に転がり、距離を取る事が出来た。

とりあえず生きている事に安心すると同時に、次同じ手が通じるとは限らないと途作は感じた。


「互いに遠距離攻撃の手段は無い。スピードもパワーも相手の方が上。勝っているのは、腕の本数と、硬さ」


いつの間にか立ち上がっていたマッスルガールを真正面に捉え、途作は考えを巡らせる。


「待て、何でオレは考えてる?あの双子に影響されすぎたか」


外道の双子は悪知恵を働かせるのが得意だった。

あの双子を倒そうと考えるあまり思考回路まで染み込んでしまったのか。


「違う、オレはぐちゃぐちゃ考えるべきじゃねぇ。考えるのはオレじゃねぇ。オレは、本能で戦って、好きに力を振るう!」


相手より早く飛び出す。

先手必勝。


「おっ、もうそんなに動けるんだね」


強化の式で速くなった拳は下手に避けず腕を生やして受け止める。

最低限の動きでガードしながら攻撃も同時に行う。

四本の腕が無ければ出来ない芸当だろう。


「おらっ、おらっ、おらあっ!」


今度は赤黒い腕で腹を連打し、攻撃は普通の腕で逸らす。


「私の腹筋の前にそんなパンチは効かないよ」


「腹筋にはな」


「うん?」


途作の拳は連打の度に腹に深く刺さるようになっていく。


「な!?どうして」


「お前はオレのこの腕に大して驚かなかった!幻視者と戦う事も想定してたからだ!けどなぁ、結局オレ以外は誰もこの能力を持ってねぇ!だが、お前はこれがただ腕を生やすだけの力だと決めつけた!だからお前はオレに勝てねぇんだよ!」


腹に連打を続けながら、途作はマッスルガールの敗因を突きつける。


「くっ、は、なっ、せぇぇぇっ!」


ついに両腕を捕まえた。

硬さなら負けない。

手首をがっちり固め逃げられなくする。


「どんなに筋肉で守られていようがなぁ、貫通出来りゃ関係ねぇよ!」


一気に腕が腹に沈み込んだ。


「今お前の背骨を掴んだ。今すぐにでもへし折れるぜ」


マッスルガールの全身の筋肉が冷や汗をかいたかのように萎縮したように感じられた。


「、、、負けたよ。降参する」


腕の力を抜き、負けを認めるマッスルガール。

途作は姿勢を変えないまま誰かが来るのを待つ事にした。




「ご苦労。護衛対象は無事保護された。実行犯も四人確保。こちらに大きな損害は無し。ホテルの破壊箇所も少ない。上出来と言うべきだろう」


「お前に褒められても嬉しくねェっての」


利得はベタついた服を脱ぎ、薄着になっている。

涼しい秋の日だが動いた後なのであまり肌寒さは感じない。


「もう少し手応えが欲しい所だったな。有名な針回しと戦えたと言うのに、大した実力が無かったのは残念だ」


「強くなりすぎたとか言い出すんじゃねぇだろうな」


途作は分吾の言葉を予想する。


「いや、武の道はそこまで甘くない。そもそも、俺を倒した双子やナイフ使いが解理に全く敵わなかったんだ。その解理を今の俺が越えられているとは到底思わん」


「言えてるな。アタシでも一撃しか入れられなかったんだし」


「オレなら十発殴れてたな」


「はッ!オマエがアタシより強い訳ねェだろ。十発殴られてたの間違いか?」


「あぁん?」


「やめないか。狭い車内で暴れられると迷惑だ」


「上等だサドリア、帰ったらオマエとも勝負だ」


運転席の大柄な男は無表情のまま呟いた。


「まずは規律を教えねばならんな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ