田島泡里・前
名鑑・三十七
五指登録・上の参・開口
巨大な穴を地面に開ける、転移の式の応用。
大きさと向きの微調整が不可能になった分、大量の物体を一度に転移させる事が出来る。
この幻術には吸引力が設定出来、ある程度穴から遠い位置にある物体でも無理矢理転移させる事が出来る。
開発者、使用者は解理。
「えー、球技大会の種目は三人制バスケットボール。ご存知の通り人数が少ないので男女混合の三人組でやります。必ず一つのチームで男子一女子二、または男子二女子一になるようにチームを分けて下さい」
賛否両論のこのシステム。
田島姉妹は早速策を考え始めた。
「身長が必要なバスケでは私達は不利」
「別に私達は小さくないけどね!」
「そこの二人、騒がないで」
急いで口を閉じる。
そもそも口に出す必要も無いのに、私語をしてしまった。
「一緒に組もうぜうぇーい」
「うぇーい、ウチら優勝狙えんじゃね?」
「あと一人男子必要じゃん。やっぱバスケ部っしょ」
田島姉妹は教室を見渡す。
チームはクラス内で組まなければならない。
バスケ部やバレー部の有力候補はまず手に入らないだろう。
この争奪戦は実質第一ラウンドだ。
優勝商品の図書などを買えるプリペイドカード千円分を手に入れるため、田島姉妹は本気で勝ちに行く。
「決めた」
「こいつなら、行ける!」
ズカズカと教室の端に歩いていく。
「ソア!私達と組もう!」
「まだチーム決まってないでしょ?」
内気で物静かな男子、想愛。
「う、うん。僕で良ければ」
美術部に所属していて、運動神経は並くらい。
特に仲が良い訳でも悪い訳でもない、関わりが薄い人物だ。
「でも、何で僕?」
「背が高い」
「あと人気が無い」
「は、はは」
中学二年生にしてはかなり高い百七十センチメートルの上背。
かなりの大穴だと二人は睨んだのだ。
「やるからには優勝を狙うよ!」
「頑張ろうね!」
二人は手を差し出した。
「あ、うん、頑張るよ」
勢いにやや押されながらも二つの小さな手を取った。
「ソア!体操服に着替えて体育館に集合ね!」
「当日まで毎日よ!」
元々体育の授業があった日なので体操服は持っていた。
練習のために昼休みは体育館が開放され、ボールの使用許可も下りている。
「よし、まずはドリブルからやるよ!」
双子は体操服の袖を捲り、ノースリーブのようにしている。
それを見て想愛の顔がやや赤くなっている事に二人は気付いていない。
「ふぅ、今日は終わり!意外とセンスあるんじゃない?」
「じゃ、明日も同じ時間にね!」
「うん」
高速でドリブルとパスを繰り返しながらボールを倉庫に片付けにいく田島姉妹。
練習はかなりハードだが、教え方が丁寧なので上達出来ているという実感が想愛にはあった。
「二人はすごく仲良しだよね。喧嘩とかしないの?」
シュートの練習をしながら双子に尋ねる。
「仲良しって言うか、一心同体かな」
「お互いの考えている事が全部分かるし、同じ事しか考えないから。二人で一人だと思ってもらって良いよ」
田島姉妹自身にも分からないこの息ピッタリ現象。
実はテスト中に相談したりチームプレイで最強だったりとかなりの恩恵がある。
「すごいね、それって。阿吽の呼吸って感じだね」
「えへへ、そうでしょ?」
「分かってくれて嬉しいよ」
そう言って泡里はスリーポイントシュートを決める。
「結婚相手も、こういう理解ある人が良いなー」
「未だに一人しか愛しちゃいけないなんて考えてる人もいるなんて信じられないよねー」
「へ、へぇ」
想愛の顔に僅かな希望の色が見えた事に、田島姉妹は気付かない。
「ソア!今日は絶対優勝するよ!」
「うう、僕ちょっと緊張してきた、、、」
想愛は緊張で固まっている。
「大丈夫!私達は誰よりも練習した!」
「自信を持て!」
沫奈は想愛の背中をバシバシと強く叩いた。
「う、うん、、、」
先に行こうとした背中が立ち止まった。
「もしどうしても緊張する時は」
「私達が何とかしてくれるって考えれば良い」
相変わらず袖を捲っている、小さな二つの背中はそう言い残して歩き出した。
「かっこいい、、、」
想愛はしばらくその背中に見とれていた。




