ミーセ・ラブゼアン・後
名鑑・三十四
五指登録・下の伍・無登録
五指登録に何も登録していない状態。
この状態で使用すると、右手の前で起こっている現象を吸い取り、新たに登録する。
登録されている現象は自身で把握出来、幻術であれば式を演算装置にコピーする事も可能である。
ただし、登録された幻術の式をコピーするためには、演算装置に特殊な改造を加える必要がある。
解理が下の伍に登録したのは、田島姉妹が使用したエレクトロバブルである。
演算装置にコピーした幻術は、秋野イズの人格を投影させていなくとも使用出来る。
エレクトロバブルは本来、四つの掌での完璧な連携を必要とし、精神共有を持たない者に使用する事はほぼ不可能である。
双腕追加を投影した解理ならば計四本の腕と幻術使用を両立出来るため、エレクトロバブルを扱える。
「うん、良いよ。やってみる」
モデルのスカウトが来たのは十四歳の頃。
有名ファッション誌に大人と同じ枠で並び、瞬く間に大人気になった。
「ミーセちゃん、何か特技はあるの?」
トーク番組に呼ばれた際に司会の男にそう振られた。
「はい、顔を見るだけでその人の性格が大体分かります」
「おおっ!本当ならそれはすごいですね!ここで実演してもらったり、、、」
「良いですよ。じゃあ、、、そこのスタッフさん。こっちに来てもらえますか?」
たまたま手が空いたスタッフを呼び寄せ、顔をじっと見た。
若い男性スタッフは美少女に見つめられ顔が赤くなった。
「もちろん初対面ですよ」
念の為付け加えた。
「うーん、アナタはすごく神経質じゃありませんか?細かな汚れや並び方の乱れがあると気になってすぐに直してしまうくらいの」
「あっ、、、。はい!当たってます!ええっ!すごい!」
「はぁーこれはすごいですねー。イカサマは一切無いですよ、これ」
ミーセはカメラに向かって微笑み、小さく手を振った。
その番組の視聴率は普段の二倍近くになったという。
「すごいすごい!これで二百問連続正解だ!」
クイズ番組は無双状態。
分からない問題はほぼ無いし、あってもテレビで出題するレベルではない。
普通ならもう呼ばなくなるが、ミーセは大人気だったため、絶対的な王者として呼ばれる事になった。
「ええ。きっと治してみせます」
医療ドラマで主演も務めた。
十五歳とは思えない演技力、記憶力、ルックス。
そのドラマでは十五歳の天才医療少女が難病を次々と治していく。
まさにミーセにぴったりの作品だ。
「この私に治療不可能な病などありませんから」
「そうですね。このような場合にはパニックになって体力を使ってしまったり、水を飲んでしまう事もありますから浮力のある物を持って浮いて救助を待つのが安全です」
その博識ぶりから朝の情報番組にもコメンテーターとしてレギュラー出演もしている。
朝から美しい少女を目にした人々は晴れやかな気持ちで仕事に向かうという。
「こんな人は初めてだったんだよ?善意と好奇心が一切乱れる事無く顔に出てるなんて」
幻想科学研究所でのある日。
断片回収の日々の合間。
田島姉妹はミーセの恋愛相談を受けていた。
「あの時晴がねぇ、、、」
「というか、そんなに正確に性格が分かるの?あ、これ別に洒落じゃないから」
時晴は日課のデータ収集。
仲良し三人組は仕事としての研究。
研究林の芝生に座りながら話していた。
「ボクは記憶力と分析力と計算力が高いからねー。今まで会ってきた人の顔、性格、行動パターンまで全部データとして頭に記録してあるんだ。だから大量のデータから傾向を導き出せばある程度分かるんだよ」
「ビッグデータって事ね」
田島姉妹は寝転がって言う。
「、、、じゃあ私達はどう見えたの?」
「最初に会った時」
ミーセは即答した。
「非常に狡猾」
四つの拳が暴れ狂った。




