表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/307

ミーセ・ラブゼアン・前

名鑑・三十三


五指登録・下の肆・氷柱


大きな氷柱を出現させ、発射する。

氷柱は右手の甲の前に生み出される。

発射速度はおよそ時速七十キロメートルで、手の甲の向きに合わせて真っ直ぐに撃ち出される。

氷柱は円錐形で、性質はただの氷と同じである。

開発者、使用者は解理。

「ミーセ、あなたいつ日本語を話せるようになったの?」


少しの間、仕事で家を開けていた。

子供はほんの少し目を離した隙に成長する。


「昨日だよ。お母さんは日本人なのに日本語全然使わないから。お母さんと日本語で話せるようになりたかったんだー」


ミーセ・ラブゼアン、四歳。

ロシア語に加え、日本語を使えるようになった。

要したのはたった一週間。


「まぁ、この子ったら。本当に天使だわ」


「てん、し?、、、あ、天使かー。ボクもまだまだだなー、えへへ」


「あら?一人称はボク、なの?」


母、可恋・ラブゼアンは不思議に思った。


「ボクって主に男性の一人称でしょう?ミーセは女の子だと思っていたんだけど」


「ボクはちゃんと女の子だよ。僕、って、下僕とか召使いとかの役職に由来があって、へりくだった表現として広まったんだって。だからボクは傲慢にならないように、へりくだった一人称を使おうって思ったんだー」


ミーセには常人には無い特別な力があった。

天才一族、島の血族。

もう一つが、動作補助。

四歳になった時、研究機関によって調べられた。

常人には不可能な、島の血族でもありえないほどの成長を遂げていたからだ。

三歳にして自国語を完璧に話し、四歳までに初等教育を終わらせた。

特別な能力を持つが故、ミーセが人を見下さないか両親は心配していた。

だが、それを気にするには早すぎる。


「まだ四歳なのよ、あなた。今からそんなに難しく考えなくても、、、」


「良いんだよ、ボクはボクのペースで頑張るから」




「ミーセと話す時に翻訳機を使うなんて新鮮だなぁ」


父は普通のロシア人。

日本語は話せない。

ミーセは、服のポケットの中に小型の翻訳機を入れた。


「細かい意味の確認をしておきたくて。翻訳機の言葉の使い方は正しいでしょ?」


翻訳機があればわざわざ他の言語を覚える必要は無い。

それでもミーセが日本語を覚えた理由は、出来たから、に過ぎない。

出来るなら、やっておく。

幼いミーセが打ち出した指針だ。

出来るの範囲が非常に広いミーセだが、広く浅くではなく、広く深く出来た。

大抵の物事は簡単にクリアしてしまうので、あまりやりがいは感じなかった。




「お母さん、どこ行くの?」


「お仕事よ。今度はすぐに終わりそうだから、帰るのは今日の夜かしらね。良い子にしているのよ」


頭を撫で、ヘアピンの位置を調整した後、ドアを開けて出ていった。

母の仕事内容は知らない。

出張でどこかに行って、しばらくして帰ってくる。


「はーい」


何度か聞いてみたが、いつもはぐらかされてしまう。

教えるべきでないと考えるなら、無理に聞き出さない方が良いという結論に至った。


「さーて、今日は何をしようかなー」


ミーセは非常に賢い。

四歳にして、およそ十二歳レベルの知能を持っている。

しかし、十二歳レベルというのは、まだ大人とは言えない。


「お絵描きとー、お散歩とー、、、」




「ネコちゃん良い子だねー」


公園で猫に話しかけるミーセ。

猫には首輪が付けられている。


「どこから来たのー?あなたもお散歩中?」


ミーセは猫を撫でながら話しかける。

猫は特に鳴く訳でもなく大人しく撫でられている。


「警戒心の欠片も無いんだねー。野生じゃ生きて行けないよ?」


どうでもいいといった感じで転がる猫。

ミーセは猫の腹を擦るように撫でる。


「警戒心が無いのはお前もだ」


「つっ!?」


振り返ろうとした瞬間に押さえ込まれた。


「は、なし、てっ!」


「一緒に来てもらうぞ、島の血族!」


抵抗しても力で遠く及ばない。

どれだけ頭脳が発達していても、単純な力は四歳だからだ。


「誰か!たすんうぅぅぅぅ!」


口を押さえられ、助けも呼べない。

近くに人はいない。

猫すら逃げてしまった。


「うんぅぅぅぅぅぅっ!?」


「暴れるな!痛い目に遭いたいか!」


連れ去られる。

島の血族は非常に希少。

その高い頭脳を求めて政治団体、犯罪集団、研究機関など様々な分野の集まりが取り込もうとしてくる。


「私の子に何してるの!」


この声は母の声。

手で口を塞がれ、薄れゆく意識の中で、ついに幻聴まで聞こえ始めたのか。


「何だ!?」


否、幻聴ではない。

空間に穴が開き、そこから母が飛び出していた。

見た事が無い怒りの表情。

手は、人差し指と親指を伸ばして誘拐犯の男を狙っている。

まるで銃を向けているように。


「おあ、あさん!」


必死に男の手を口から退かしながら叫ぶ。

男が腰を落とした状態から急に振り返ろうとしたので、ミーセは地面に投げ出されてしまった。


「がああああああっ!?」


顔を上げると、男は光の銃弾を何発も受けていた。

可恋の人差し指から発射されている。


「私の天使を返しなさい」


「ああっ!?がっ!?す、すまな!すまなかった!ゆ、ゆるじでっ!」


「まだ必要よ」


何十発も銃弾を受けても男に傷一つ無い。

母は射撃の手を緩めない。


「あがっ!?ごめん!?ごめんなざいっ!いだいっ!いだいいいっ!」


「お、お母さん、も、もうやめて」


見ているのも耐えられなくなってミーセは泣きそうになりながら言った。


「あら、このくらいで良いの?」


すんなり撃つのをやめた。

男は意識を失い、痙攣している。


「ミーセ。無事で良かった」


安堵の表情でミーセに抱きつく。

さっきとは別人のようだ。


「う、うん」


「間に合って良かったわ。あと少し遅ければ連れていかれていたかも」


「お、お母さん、どうしてここに?さっきまでいなかったのに」


可恋は身体をミーセから離して顔を見合わせた。


「このヘアピン、実は発信機が入っているの。ミーセが危ない目に遭っている時にお母さんに教えてくれるのよ」


「でも、どうやって来たの?」


空間に開いた大きな穴の事を思い出した。


「あれはね、幻術って言って、とっても難しい科学技術が使われているの。ミーセもその内知る事になると思うわ」


「あの、銃は?この人は大丈夫なの?」


痙攣は止まり、静かに倒れている男の方を見た。


「ああ。それも幻術よ。それに、この人は怪我一つしてないわ。痛みだけ与える幻術なの。まぁ、ちょっとしたお仕置きね」


「かわいそうだよ」


可恋はその言葉を聞いて優しく笑った。


「あなたは優しい子ね。大丈夫。もうしないわ。怖い思いをさせてごめんなさいね」


もう一度ミーセを抱きしめると、母は電話をかけた。

その日は久しぶりに二人で家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ