表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も悲しませないバッドエンド  作者: 二重名々
or truth

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

249/307

上野途作・前

名鑑・三十二


五指登録・下の参・反転


対象の向きを反転させる幻術が登録されている。

転移の式の応用で、対象がいる座標を中心に、対象とその周りの空気を瞬時に回転させる。

対象が移動中だった場合、その勢いを維持したまま反転する。

対象のみが反転しても勢いを維持する事は出来ないが、周囲の空気ごと回転させる事によって対象と空気が共に動き、可能にする。

地球の自転を含めた計算処理や範囲内に複数の方向ベクトルが発生していた場合の処理は幻想科学の研究機関がまとめたデータを元に作成されている。

回転によって対象が他の物質にめり込んだ場合、他の物質を押し出す。

よって、どれほど強固な物質であっても形を歪める事が出来るが、この性質を活用するのは困難である。

開発者は解理と秋野イズ。

使用者は解理。

「オマエ、その腕、幻視者だな?」


「あぁ?なんあおあえ?」


完全食バーを咥えながら振り返る。

立っていたのは中肉中背の、、、人。


「アタシは解理。オマエと同じ幻視者だ」


「はぁ?」


完全食バーを噛み切り、睨みつける。


「幻視者?が何かは知らねぇがオレは今機嫌がわりぃ。訳分かんねぇ事言ってるとぶん殴るぞ」


「幻視者とは常人には無い稀有な能力の事だ。その腕のような」


「ぶん殴るって言ったよな?」


完全食バーを持っていない左手の方で顔を狙う。

話し方が変わったのは奇妙だが、どうでも良かった。


「こちらが説明してやっているのにその態度は何だ。そういう所が無作法なんだよ」


「なっ!?」


今の拳は避けられるはずが無かった。

だが、目の前の人物は容易く、最小限の動きで躱した。

行き場を失った拳が空を切る。


「君は幻視者。そうだね?」


またも雰囲気が変わった。

そして凄まじい威圧感。

断るという選択肢を脳内から排除しなければならない。


「、、、あぁ。そうなるな」


「うん。では私と一緒に来てみないかい?強さに興味があるなら」


「何するつもりだ?」


「古民家で他の幻視者と暮らすんだよ」


「はぁ?」


解理は手を差し出す。


「高めあえるライバル、自由な環境。そして強くなるための特殊な要因。さぁ、どうしたい?」


質問という形だが、やはり断る事は許されない。

断れば最悪死に至る。

上野途作の直感がそう叫んでいた。


「ったく」


完全食バーを再び口に咥え、解理の手を取った。


「「じゃ、行くか」」


その路地裏は倒れた闇商人達だけになった。




「で、今日は勧誘か。オレは要るのか?」


「ああ。何でも、経験豊富な元軍人らしいからね。荒削りな君の訓練になると思って」


「オレはお前の教え子じゃねぇ」


「じゃあ部下かな。そしてこれは上司命令。その元軍人に一体一で勝負を仕掛けるんだ」


夜の闇、街灯以外に明かりは無い。

イギリスの中心から離れた地域。

ぽつんと屋敷があった。

近くには墓場。


「随分と不便な所に住んでやがるな」


「ええ。おかげで秘密裏に事を運べますわ」


怪訝そうな顔をする途作を無視し、解理は戸を叩く。


「ごめん下さーい!どなたかいらっしゃいますかー!」


自然豊かな墓場のそばに不自然に立つこの家に住むのは、元軍人の老人。

一人で住んでいるのもこの時間に家にいるのも知っているが、敢えて解理は確認を取った。


「はい、はい。どなたかな?」


扉が開くと、綺麗に整った髪、髭、服装の老紳士が出てきた。


「解理、こいつか?」


「ええ。どうぞ」


この紳士に日本語が分かるかどうかなど気にせず途作は解理に尋ねた。

返答を聞き、起こした行動は。


「おらぁぁぁっ!」


二本の腕を思い切り振り抜いた。


「おっと。いきなりだね」


腕は半透明の物体によって受け止められた。

それは人の形をしている。


「ちぃっ!何だこれ!」


殴った衝撃で消滅したものの、また新たに生み出された。


「霊魂軍隊。それがこの方の能力ですわ。近くの霊魂を兵隊にし、操ります」


「ほう?知っていて襲撃してきたと」


兵を蹴散らしながら途作は突き進む。

しかし、どんどん押し流されるように距離が離れていってしまう。


「厳密に言いますと、勧誘を兼ねた襲撃、ですわね」


解理はいつの間にか取り出した木刀で霊体を消しながら言った。


「勧誘?この老いぼれに何のお誘いをしたいのかね?」


「信念の証明、とでも言っておきましょうか」




「おいおい、オレの訓練にしちゃ簡単過ぎねぇか!」


掌から赤黒い腕を伸ばし、二倍の長さにする。

その状態で回転し、霊体達を薙ぎ払う。


「及第点だ。私が操っていればお前は死んでいた」


「ほう、この私よりも経験豊富だと?」


老紳士が割り込む。


「そうだ。お前とて私より長くは生きていない。もちろんお前の過去も知っている」


途作を半分無視しながら本題に入る。


「私の、過去?ほう、例えばどのような?」


試すつもりで言ったのかもしれないが、逆効果となった。


「サドリア・バナガルト。君は当時の上司の死を目の当たりにした。そしてその霊魂を使って敵を殺した」


サドリアの目には明らかに動揺の色が浮かんでいた。


「何故それを」


「たまたま同じ戦場にいただけだよ。、、、そして君の信念もそこで定まった。質よりも量。人生の指針とも言えるかもしれないね」


「何が言いたい」


サドリアに一切の余裕は見えない。


「本当にそれが正しかったのか、試してみたいと思わないかい?」




「よォ途作。イギリス旅行は楽しかったか?」


「まぁまぁあな。れいおんにおひつぶさえあけどな」


「勧誘は成功したのか?」


完全食バーを一気に口の中に入れ、飲み込んだ。


「良く分かんねぇが成功だとよ。またここに住人が増えるかもな」


「七人目か」


「解理の奴、何考えてんだか」


「計画実行は夏らしいぜ。それまでは鍛錬の日々だとさ」


利得はうんざりした表情になり、分吾は深く頷いた。

そして途作は部屋から出た。


「ちょっくら解理に挑んでくる」


「「返り討ちだな」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ