能登時晴・後
名鑑・三十一
五指登録・下の弐・充電
転移の式でバッテリーを取り寄せる幻術が登録されている。
使用者の左手の上約五十センチメートルの地点の空間に穴を開け、バッテリーを落とす。
もう一度使用すると左手の下約五十センチメートルの地点の空間に穴を開け、バッテリーを返す事が出来る。
使用すると交互に異なる転移の式が発生する、という幻術を登録しているため、このように一つの登録箇所で二種類の現象を起こせる。
バッテリーには防御用の式陣がプリントされており、これによって五指登録使用時に電力を吸い取られないようにしている。
電力吸収からの防御は幻術さえ使えれば容易な部類であり、田島姉妹もエレクトロバブルを稲畑栄樹に向けて使用した際にも用いた。
開発者、使用者は解理。
「ハードウェアたんとぉ!滝井伊寄!」
「ソフトウェア担当。武蔵野睦規」
「幻術担当!石見海乃!」
「「「我ら幻想科学研究所第三ラボ!」」」
「、、、何です、これ?」
時晴は冷ややかな目をして言った。
「自己紹介だよかっこいいでしょ?」
「特徴的な名乗りは記憶に残りやすい」
「これにトキハルも加えるよ」
「えええ、、、。最初にやる事がこれなんですか、、、」
大学に通いながら、幻想科学研究所で働く事になったが、初日にやる事がこれとは時晴も予想出来なかった。
そして一週間。
最初はともかく、数日もすればもっと研究者らしい事が出来ると思っていた。
「あのー」
「なんじゃい」
「これって俺である必要あります?」
ある意味禁断の質問。
一週間遊びや雑務ばかり。
一応研究者の素質を認められたのだから、その素質を使いたいと思うのは当然だ。
「例え雑用でも、分かってる人の方が便利なんだよ。それに、達人の技は見て盗めって言うでしょ?キミは弟子なんだから師匠の身の回りの世話から始めるんだよう」
「ふーむ、なるほど?つまりしばらくは研修期間って事ですか?」
大抵の企業では研修期間のような物がある。
それは研究者とて同じという事なのかと時晴は納得する。
「そうそう研修。ま、機材やデータはある程度自由に使っていーし、暇な時間も多いだろうから自分で色々研究してても良いよ」
「おお!分かりました!やってみます!」
意図せずやる気が上がった時晴。
四六時中様々なデータを集めたり、分析したりするようになった。
「俺は試されているのかもしれない」
先輩三人の世話。
世話、は日常生活にも当然適用される。
「三人の新しい服を買う。冬物一式、そして下着」
ファッションに興味は無く、恥じらいも無い。
使いっ走りの時晴に買いに行かせたのだ。
「どうかされましたか?」
「い、いえ、あの、じゃあこれを四セット下さい。サイズは、、、」
「かしこまりました」
何か怪しんだり気味悪がったりと言った反応をする訳でもなく、マニュアル通りなのが逆に心臓に悪い。
「ありがとうございました」
若い女性店員から商品を受け取り、店を後にする。
「今警官に会いたくねぇな、、、」
「次は洗濯をやっちゃおっかー」
「どんどん俺の雑務が増えてく!?」
洗濯物を干していく。
シャツ、バスタオル、ズボンを干し終えると、細かな下着類。
「何も考える必要は無い。これは布だ」
こうして半年近く経った。
「つまり貴様は自分で選んだ下着を着させているという事になる!」
「変態は成敗!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!俺にも責任はあるかもだけど、それを何とも思わなかった周りにも責任はあるんじゃなひあばばばばばばばばっ!?」




