第一話「知らないな」
いつも同じように鳴るこの音は救いだ。
「ふぅ、やっと授業終わったぜー」
目一杯伸びをする。
「最後の古典なんかホント地獄みたいだったよね」
左前の席から里奈が答える。
大和里奈。
俺の幼なじみだ。
高校が同じどころか小一から高三までずっと同じクラスだ。
奇跡じゃないか?
「さぁて、帰るかなっと!」
勢いよくカバンを背負い、帰りますアピールをする。
するとやはり。
「あ、一緒に帰ろ!」
俺は冷静に答える。
「おう」
帰り道はほぼ同じだ。里奈の家は三軒隣だからだ。
手前の里奈の家が角から見えた。
「じゃ、また明日ね!」
「じゃあなー」
家の鍵を開ける里奈を横目に三軒先の家路を急ぐ。
すると、向こうから声が聞こえる。
女の子の声だ。
「あ、いたいた!ショウヤ!アキノショウヤだよね?」
知らないな。
とその声の主の顔を見て思う。
「あ?そうだけど、、、誰だお前?」
よく見ると変わった服を着ている。
透け感のあるトップスに異常にカラフルなスカートと靴、複雑に編み込まれた髪。
大きなカバン。ファッションはよく分からないが、今はあんなのが流行っているのか?
「ワタシはカズサ。んー、話すと長くなるからちょっとついて来て!」
「ちょ、ちょ待てよ!」
腕を引っ張られ、あと数歩だった家から強引に離されていく。
いきなり出てきて俺をどこに連れていくのか?
これが少女じゃなくて怪しいマスクとサングラスの男だったら犯罪だぞ。
女でも犯罪か。
近所のファミレスだ。
なぜここに連れてこられたのだろうか。
「ったく、なんなんだよお前」
まだ状況が理解出来ていない。
それなのにこいつは。
「すみませーん。デラックスパフェ一つ!」
「おい、話聞けって。注文すんな。って高!1200円かよ!」
メニューにはフルーツやアイスがいろいろ乗ったとんでもないパフェの写真が。
店員は俺が大声を出した事に少し驚いたが、すぐにマニュアル通りの対応に戻り、店の奥へ消えた。
「はいはい、落ち着いて。」
こいつはカバンから画面付きの機械を取り出しながら言う。
思わず俺は。
「お前が原因だろ!」
そろそろ腹が立ってきた。一回ゲンコツを食らわせてやろうか。
などと考えていると。
「はい注目。まずこれみてね」
画面付きの機械をこちらに向ける。
この機械は見たことがない。
ノートパソコンと三面鏡を合体させたみたいだ。
その画面が映し出したのは、、、。